2021年5月号:今年の夏は?

写真:たわわに実る梅(横浜研究所)

皆さま、いかがお過ごしでしょうか?西日本は梅雨入りし、じめじめとした空気が流れ込んでいます。久しぶりに横浜研究所の中庭を散歩したところ、梅の実が見事に成っていました。風に大きく揺さぶられ、地面にたくさん落ちています。東日本もそろそろ梅雨入りしそうですね。これから暑い夏がやってきますが、夏の天候が気になりますね。

SINTEX-Fの季節予測によると、今年の6月から8月は、世界の多くの地域において、気温が平年より高くなる見込みです。一方で、南米の北部、ヨーロッパ北部の一部の地域では、気温が平年より低くなる見込みです。

また、メキシコや南米の北部、西アフリカの一部、ユーラシア大陸の北部、フィリピン、インドネシア、インドシナ半島、中国東部、朝鮮半島などでは雨が平年より多く、アメリカの中部・東部や南米の南部、ガボン、ユーラシア大陸の一部などでは、雨が平年より少ない見込みです。

原因の1つとして、熱帯域の海水温の変動が挙げられます。太平洋の熱帯域では海水温が平年並みの状況が、インド洋では西部で海水温がわずかに高い状況が続く見込みです。

今年の6月から8月までの気温と降水量は?

図1 2021年6月から8月までに予測される地上気温の平年差(ºC)。 予測開始日は5月1日。

今年の6月から8月までに予測される世界の気温を見てみましょう。SINTEX-Fの予測によると、世界の多くの地域において、気温が平年より高くなる見込みです。一方で、南米の北部、ヨーロッパ北部の一部の地域では、気温が平年より低くなる見込みです(図1)。

図2 2021年6月から8月までに予測される降水量の平年差(mm/日)。予測開始日は5月1日。

続いて、今年の6月から8月までに予測される世界の降水量を見てみましょう。 SINTEX-Fの予測によると、メキシコや南米の北部、西アフリカの一部、ユーラシア大陸の北部、フィリピン、インドネシア、インドシナ半島、中国東部、朝鮮半島などでは、雨が平年より多くなる見込みです(図2)。一方で、アメリカの中部・東部や南米の南部、ガボン、ユーラシア大陸の一部などでは、雨が平年より少ない予測となっています。

また、日本の夏は気温が平年より高く、雨がわずかに多くなりそうです。ただし、中高緯度の予測精度には限界がありますので、今後の情報に十分に注意されてください。

今年の6月から8月までの海面水温は?

図3 2021年6月から8月までに予測される海面水温の平年差(ºC)。予測開始日は5月1日。

日々の天気と異なり、季節を決める気候の変動には海水温が大きく関わっています(参照:季節予測とは?)。特に、熱帯は他の海域に比べて海面水温が高く、わずかな海水温の変動が世界の気候に影響をもたらします。

SINTEX-Fの予測によると、今年の6月から8月まで太平洋の熱帯域は、海水温が平年並みの状況となる見込みです(図3)。一方、インド洋の熱帯域は、西部で海水温が平年よりやや高くなる見込みです。

図4 2021年6月以降に予測される、エルニーニョもどき指数およびインド洋ダイポール指数(ºC)。予測開始日は5月1日。黒線が観測値、複数のカラー線が36個の異なる初期条件で計算した予測値で、紫線が36個の予測値の平均値。

それでは、これら熱帯域の海水温の変動が今後どのように発達、衰退していくのでしょうか?そこで、海水温の変動が最もよく現れる海域で平均した海水温の平年差を見てみましょう。熱帯太平洋のエルニーニョもどき指数を見ると(図4上段)、今年の3月まで-0.5度を下回り、ラニーニャもどき現象が発生しておりました。しかし、予測値の平均(紫線)を見ると、今後は減衰して平年並みの状況に戻る見込みです。こうした傾向は、他の研究機関の予測結果でも見られています。

一方、インド洋の海水温の変動ですが、インド洋ダイポール指数を見ると(図4下段)、今年の4月に0.5度付近まで上昇し、西部で水温がやや高くなりました。しかし、予測値の平均(紫線)を見ると、今後は減衰して平年並みの状況に戻る見込みです。こうした傾向は、他の研究機関の予測結果でも見られます。ただし、1つ1つの予測値(色線)の振れ幅が大きく、不確実性が大きいので、今後の情報に十分に注意されてください。

日本を含む世界の気候には、太平洋に発生するエルニーニョ・ラニーニャ現象やエルニーニョ・ラニーニャもどき現象、インド洋に発生するインド洋ダイポール現象などが、大きく影響を及ぼすことが分かっています。海洋起源の気候変動現象がこれからどのように変動し、世界の気候にどのような影響を与えるか、今後注意してみていきましょう。