2021年11月号 冬の天候は?

   米国プリンストンの紅葉

皆さま、いかがお過ごしでしょうか?寒さが少しずつ増してきました。米国プリンストンでは、紅葉がピークに達しており、街の景色が色鮮やかです。朝晩は息が白く寒いのですが、日中は日差しが暖かく心地よいです。これから季節が変わりますが、冬の天候が気になりますね。

 

SINTEX-Fの季節予測によると、今年の12月から来年の2月は、世界の多くの地域で、気温が平年より高くなる見込みです。一方で、アラスカやカナダ西部、ブラジル、インド、インドシナの一部では、気温が低くなる見込みです。

 

また、アメリカ南部、メキシコ、アマゾン西部、ラプラタ、タンザニア、マダガスカル北部、インドネシア西部、インドシナの一部、中国南東部などでは雨が平年より少なく、カナダ、ブラジル、アフリカ南部、中東の一部、オーストラリア北部、フィリピン、中国北東部などでは、雨が平年より多い見込みです。

 

原因の1つとして、海水温の変動が挙げられます。太平洋の熱帯域では、中央部で海水温が平年より低く、西部と東部で高くなる、ラニーニャもどき現象のような状況となる見込みです。インド洋では、南西部で海水温が平年より高く、南東部で海水温が低くなる、正のインド洋亜熱帯ダイポール現象が発達する見込みです。

今年の12月から来年の2月までの気温と降水量は?

図1 2021年12月から2022年2月までに予測される地上気温の平年差(ºC)。予測開始日は11月1日。

 

今年の12月から来年の2月までに予測される世界の気温を見てみましょう。SINTEX-Fの予測によると、世界の多くの地域において、気温が平年より高くなる見込みです。一方で、アラスカやカナダ西部、ブラジル、インド、インドシナの一部では、気温が平年より低くなる見込みです(図1)。

図2:2021年12月から2022年2月までに予測される降水量の平年差(mm/日)。予測開始日は11月1日。

次に、今年の12月から来年の2月までに予測される世界の降水量を見てみましょう。SINTEX-Fの予測によると、アメリカ南部、メキシコ、アマゾン西部、ラプラタ、タンザニア、マダガスカル北部、インドネシア西部、インドシナの一部、中国南東部などでは雨が平年より少なくなる見込みです(図2)。一方、カナダ、ブラジル、アフリカ南部、中東の一部、オーストラリア北部、フィリピン、中国北東部などでは、雨が平年より多い予測となっています。

また、日本の冬は気温が平年より高く、北海道と日本の南側で降水量が平年より少なくなる見込みです。ただし、中高緯度の予測精度には限界がありますので、今後の情報に十分に注意されてください。

図3:2021年12月から2022年2月までに予測される海面水温の平年差(ºC)。予測開始日は11月1日。

日々の天気と異なり、季節を決める気候の変動には海水温が大きく関わっています(参照:季節予測とは?)。特に、熱帯は他の海域に比べて海面水温が高く、わずかな水温の変動が世界の気候に影響をもたらします。

SINTEX-Fの予測によると、今年の12月から来年の2月まで太平洋の熱帯域は、中央部で海水温が平年より低く、西部と東部で高くなる、ラニーニャもどき現象のような状況となる見込みです(図3)。一方、インド洋の熱帯域は平年並みとなりますが、インド洋の南西部で海水温が平年より高く、南東部で海水温が低くなる、正のインド洋亜熱帯ダイポール現象が発達する見込みです。

図4:2021年12月以降に予測される、エルニーニョもどき指数およびインド洋亜熱帯ダイポール指数(ºC)。予測開始日は11月1日。黒線が観測値、複数のカラー線が36個の異なる条件で計算した予測値で、紫線が36個の予測値の平均値。

それでは、これらの海水温の変動が今後どのように発達、減衰していくのでしょうか?そこで、海水温の変動が最もよく現れる海域で平均した海水温の平年差を見てみましょう。熱帯太平洋のエルニーニョもどき指数を見ると(図4上段)、12月には-0.5度を下回り、ラニーニャもどき現象が発達し、その後少しずつ減衰していく見込みです。こうした傾向は、他の研究機関の予測結果でも見られています。

 

一方、インド洋の海水温の変動ですが、インド洋亜熱帯ダイポール指数を見ると(図4下段)、12月には0.5度を超えて正のインド洋亜熱帯ダイポール現象が発達し、ピークを迎えた後に3月から徐々に弱まる見込みです。

日本を含む世界の気候には、太平洋に発生するエルニーニョ・ラニーニャ現象だけでなく、エルニーニョ・ラニーニャもどき現象やインド洋亜熱帯ダイポール現象などもまた、影響を及ぼすことがわかっています。海洋起源の気候変動現象がこれからどのように変動し、世界の気候にどのような影響を与えるか、今後注意してみていきましょう。