2022年2月号 春の天候は?

春が近づくプリンストン

皆さま、いかがお過ごしでしょうか?新年が明けた1月15日に、南太平洋のトンガ諸島で海底火山が噴火し、研究者の間でも話題になりました。火山噴火や津波、気候への影響などについて、JAMSTECでは様々な調査を続けております(こちら)。今後、季節予測にも変化が見られるか、注意して見ていきたいと思います。

さて、筆者が滞在する米国プリンストンでは、冬の寒さが和らぎ、春が近づいてきました。研究所の前では、可愛らしいグース(ガチョウ)が集まり、雪で覆われていた地面の草葉を一生懸命食べております。これから季節が変わりますが、春の天候が気になりますね。

 

SINTEX-Fの季節予測によると、今年の3月から5月は、世界の多くの地域で、気温が平年より高くなる見込みです。一方で、アラスカやカナダ西部、南米北部、インドシナの一部では、気温が低くなる見込みです。

 

また、アメリカ、アラスカ南部、ラプラタ、インドネシア、中国南東部、地中海北部、中東の一部などでは雨が平年より少なく、カナダ、ブラジル、メキシコ、中央アメリカ、オーストラリア北部・西部、アフリカ南部、中央アフリカ、インド、スリランカ、インドシナ、中国、フィリピン、スカンジナビア、ロシアの一部などでは、雨が平年より多い見込みです。

 

原因の1つとして、海水温の変動が挙げられます。太平洋の熱帯域では、中央部から東部で海水温が平年より低く、西部で高くなる、ラニーニャ現象が弱まりながら続く見込みです。インド洋では、熱帯域は平年並みとなりますが、オーストリアの北西部の沖合で海水温が平年より高く、ニンガルーニーニョ現象が続く見込みです。

図1 2022年3月から5月までに予測される地上気温の平年差(ºC)。予測開始日は2月1日

 

今年の3月から5月までに予測される世界の気温を見てみましょう。SINTEX-Fの予測によると、世界の多くの地域において、気温が平年より高くなる見込みです。一方で、アラスカやカナダ西部、南米北部、インドシナの一部では、気温が平年より低くなる見込みです(図1)。

図2:2022年3月から5月までに予測される降水量の平年差(mm/日)。予測開始日は2月1日。

次に、今年の3月から5月までに予測される世界の降水量を見てみましょう。SINTEX-Fの予測によると、アメリカ、アラスカ南部、ラプラタ、インドネシア、中国南東部、地中海北部、中東の一部などでは雨が平年より少なくなる見込みです(図2)。一方、カナダ、ブラジル、メキシコ、中央アメリカ、オーストラリア北部・西部、アフリカ南部、中央アフリカ、インド、スリランカ、インドシナ、中国、フィリピン、スカンジナビア、ロシアの一部などでは、雨が平年より多い予測となっています。

また、日本の春は気温が平年より高く、北海道を除いて降水量が平年より少なくなる見込みです。ただし、中高緯度の予測精度には限界がありますので、今後の情報に十分に注意されてください。

今年の3月から5月までの海面水温は?

 

図3:2022年3月から5月までに予測される海面水温の平年差(ºC)。予測開始日は2月1日。

日々の天気と異なり、季節を決める気候の変動には海水温が大きく関わっています(参照:季節予測とは?)。特に、熱帯は他の海域に比べて海面水温が高く、わずかな水温の変動が世界の気候に影響をもたらします。

 

SINTEX-Fの予測によると、今年の3月から5月まで太平洋の熱帯域は、中央部から東部で海水温が平年より低く、西部で高くなるラニーニャ現象が弱まりながら続く見込みです(図3)。一方、インド洋の熱帯域は平年並みとなりますが、オーストラリア北西部の沖合で海水温が平年より高くなる、ニンガルーニーニョ現象が続く見込みです。

図4:2022年3月以降に予測される、エルニーニョ指数とニンガルーニーニョ指数(ºC)。予測開始日は2月1日。黒線が観測値、複数のカラー線が36個の異なる条件で計算した予測値で、紫線が36個の予測値の平均値。

 

それでは、これらの海水温の変動が今後どのように発達、減衰していくのでしょうか?そこで、海水温の変動が最もよく現れる海域で平均した海水温の平年差を見てみましょう。熱帯太平洋のエルニーニョ指数を見ると(図4上段)、5月以降に-0.5度を上回り、ラニーニャ現象が減衰していく見込みです。こうした傾向は、他の研究機関の予測結果でも見られています。

一方、インド洋の海水温の変動ですが、ニンガルーニーニョ指数を見ると(図4下段)、3月まで0.5度を超えてニンガルーニーニョ現象が発達し、その後徐々に弱まる見込みです。

日本を含む世界の気候には、太平洋に発生するエルニーニョ・ラニーニャ現象だけでなく、インド洋や他の海域の水温変動もまた、影響を及ぼすことがわかっています。海洋起源の気候変動現象がこれからどのように変動し、世界の気候にどのような影響を与えるか、今後注意してみていきましょう。