2021年8月号:秋の天候は?

写真:ピンク色の朝顔(横浜研究所)

皆さま、いかがお過ごしでしょうか?7月は梅雨明けとともに暑い日差しが降り注いでいましたが、8月に入ってから、曇りや雨の日が見られております。横浜研究所では、夏の暑さを思い出させるように、ピンク色の朝顔がきれいに咲いておりました。これから季節が変わりますが、秋の天候が気になりますね。

SINTEX-Fの季節予測によると、今年の9月から11月は、世界の多くの地域において、気温が平年より高くなる見込みです。一方で、南米の北部、オーストラリア南部、インド、インドネシアの一部の地域では、気温が平年より低くなる見込みです。

また、アラスカやカナダの西岸、中央アメリカ、南米の北部、ヨーロッパの北部、インド、インドシナ半島の一部、フィリピン、インドネシア、オーストラリアの東部などでは雨が平年より多く、アメリカや南米の南部、アフリカ南部、西アフリカ、ヨーロッパの南部、インドシナ半島の一部、中国、スリランカなどでは、雨が平年より少ない見込みです。

原因の1つとして、熱帯域の海水温の変動が挙げられます。太平洋の熱帯域では、中央部で海水温が平年よりわずかに低く、西部と東部でわずかに高くなる、弱いラニーニャもどき現象のような状況となる見込みです。インド洋では、東部で海水温が平年より高くなる、負のインド洋ダイポール現象の状況が続く見込みです。

今年の9月から11月までの気温と降水量は?

図1 2021年9月から11月までに予測される地上気温の平年差(ºC)。 予測開始日は8月1日。

今年の9月から11月までに予測される世界の気温を見てみましょう。SINTEX-Fの予測によると、世界の多くの地域において、気温が平年より高くなる見込みです。一方で、南米の北部、オーストラリア南部、インド、インドネシアの一部の地域では、気温が平年より低くなる見込みです(図1)。

図2 2021年9月から11月までに予測される降水量の平年差(mm/日)。予測開始日は8月1日。

続いて、今年の9月から11月までに予測される世界の降水量を見てみましょう。 SINTEX-Fの予測によると、アラスカやカナダの西岸、中央アメリカ、南米の北部、ヨーロッパの北部、インド、インドシナ半島の一部、フィリピン、インドネシア、オーストラリアの東部などでは、雨が平年より多くなる見込みです(図2)。一方で、アメリカや南米の南部、アフリカ南部、西アフリカ、ヨーロッパの南部、インドシナ半島の一部、中国、スリランカなどでは、雨が平年より少ない予測となっています。

また、日本の秋は気温が平年より高く、北海道を除いて雨がわずかに多くなりそうです。ただし、中高緯度の予測精度には限界がありますので、今後の情報に十分に注意されてください。

今年の9月から11月までの海面水温は?

図3 2021年9月から11月までに予測される海面水温の平年差(ºC)。予測開始日は8月1日。

日々の天気と異なり、季節を決める気候の変動には海水温が大きく関わっています(参照:季節予測とは?)。特に、熱帯は他の海域に比べて海面水温が高く、わずかな海水温の変動が世界の気候に影響をもたらします。

SINTEX-Fの予測によると、今年の9月から11月まで太平洋の熱帯域は、中央部で海水温が平年よりわずかに低く、西部と東部でわずかに高くなる、弱いラニーニャもどき現象のような状況となる見込みです(図3)。一方、インド洋の熱帯域は、西部に比べて東部で海水温が平年より高くなり、負のインド洋ダイポール現象の状況が続く見込みです。

図4 2021年9月以降に予測される、エルニーニョもどき指数およびインド洋ダイポール指数(ºC)。予測開始日は8月1日。黒線が観測値、複数のカラー線が36個の異なる条件で計算した予測値で、紫線が36個の予測値の平均値。

それでは、これら熱帯域の海水温の変動が今後どのように発達、衰退していくのでしょうか?そこで、海水温の変動が最もよく現れる海域で平均した海水温の平年差を見てみましょう。熱帯太平洋のエルニーニョもどき指数を見ると(図4上段)、今年の9月から-0.5度を下回り、弱いラニーニャもどき現象の状態が12月まで続き、その後、減衰する見込みです。こうした傾向は、他の研究機関の予測結果でも見られています。

一方、インド洋の海水温の変動ですが、インド洋ダイポール指数を見ると(図4下段)、今年の6月に-0.5度を下回り、10月まで負のインド洋ダイポール現象の状態が続き、その後、減衰する見込みです。こうした傾向は、他の研究機関の予測結果でも見られます。ただし、1つ1つの予測値(色線)の振れ幅が大きく、不確実性が大きいので、今後の情報に十分に注意されてください。

日本を含む世界の気候には、太平洋に発生するエルニーニョ・ラニーニャ現象だけでなく、エルニーニョ・ラニーニャもどき現象、インド洋に発生するインド洋ダイポール現象などもまた、影響を及ぼすことが分かっています。海洋起源の気候変動現象がこれからどのように変動し、世界の気候にどのような影響を与えるか、今後注意してみていきましょう。