2022年8月号 秋の天候は?

写真:夏の海と空(New Jersey Shore)

写真:夏の海と空(New Jersey Shore)

皆さま、いかがお過ごしでしょうか?米国プリンストンから車で東へ1時間、New Jersey Shoreにはたくさんの海水浴客が訪れています(写真)。水温が20度位で冷たいですが、海ごみが少なく、砂浜がきれいで驚きました。これから季節が夏から秋へと変わりますが、秋の天候が気になりますね。

 

SINTEX-Fの季節予測によると、今年の9月から11月は、世界の多くの地域で、気温が平年より高くなる見込みです。一方で、南米北部、オーストラリア南部、北アフリカ、東アフリカ、インド、インドネシアとインドシナの一部の地域では、気温が低くなる見込みです。

 

また、アメリカ、ラプラタ、チリ、西・中央・東アフリカ、スリランカ、インドネシアの一部、ヨーロッパ、ユーラシアと中国の一部などでは雨が平年より少なく、アラスカ南部、カナダ、中央アメリカ、南米北部、オーストラリア東部、インドネシア、フィリピン、インドシナの一部、インド、ヨーロッパ北部、ユーラシアの一部などでは、雨が平年より多い見込みです。

 

原因の1つとして、海水温の変動が挙げられます。太平洋の熱帯域では、中央部から東部で海水温が平年より低く、西部で高くなる、ラニーニャ現象のような状況が徐々に弱まる見込みです。インド洋の熱帯域では、東部で海水温が平年より高く、西部で低くなる、負のインド洋ダイポール現象が発達し、ピークに達する見込みです。

 

今年の9月から11月までの気温と降水量は?

図1 2022年9月から11月までに予測される地上気温の平年差(ºC)。予測開始日は8月1日。

 

今年の9月から11月までに予測される世界の気温を見てみましょう。SINTEX-Fの予測によると、世界の多くの地域において、気温が平年より高くなる見込みです。一方で、南米北部、オーストラリア南部、北アフリカ、東アフリカ、インド、インドネシアとインドシナの一部の地域では、気温が平年より低くなる見込みです(図1)。

図2:2022年9月から11月までに予測される降水量の平年差(mm/日)。予測開始日は8月1日。

次に、今年の9月から11月までに予測される世界の降水量を見てみましょう。SINTEX-Fの予測によると、アメリカ、ラプラタ、チリ、西・中央・東アフリカ、スリランカ、インドネシアの一部、ヨーロッパ、ユーラシアと中国の一部などでは雨が平年より少なくなる見込みです(図2)。一方、アラスカ南部、カナダ、中央アメリカ、南米北部、オーストラリア東部、インドネシア、フィリピン、インドシナの一部、インド、ヨーロッパ北部、ユーラシアの一部などでは、雨が平年より多い予測となっています。

また、日本の秋は気温が平年より高く、降水量が平年より少なくなる見込みです。ただし、中高緯度の予測精度には限界がありますので、今後の情報に十分に注意されてください。

今年の9月から11月までの海面水温は?

図3:2022年9月から11月までに予測される海面水温の平年差(ºC)。予測開始日は8月1日。

日々の天気と異なり、季節を決める気候の変動には海水温が大きく関わっています(参照:季節予測とは?)。特に、熱帯は他の海域に比べて海面水温が高く、わずかな水温の変動が世界の気候に影響をもたらします。

 

SINTEX-Fの予測によると、今年の9月から11月まで太平洋の熱帯域は、中央部から東部で海水温が平年より低く、西部で高くなるラニーニャ現象のような状況が弱く続く見込みです(図3)。一方、インド洋の熱帯域は、東部で海水温が平年より高く、西部で低くなる、負のインド洋ダイポール現象が発達する見込みです。

 

 

図4:2022年8月以降に予測される、エルニーニョ指数とインド洋ダイポール指数(ºC)。予測開始日は8月1日。黒線が観測値、複数のカラー線が36個の異なる条件で実験した予測値で、紫線が36個の予測値の平均値。

 

それでは、これらの海水温の変動が今後どのように発達、減衰していくのでしょうか?そこで、海水温の変動が最もよく現れる海域で平均した海水温の平年差を見てみましょう。熱帯太平洋のエルニーニョ指数を見ると(図4上段)、9月から11月にかけて-0.5度を上回り、ラニーニャ現象のような状況が徐々に減衰する見込みです。その後、冬には平年並みに戻る見込みです。こうした傾向は、他の研究機関の予測結果でも見られています。

 

一方、インド洋の海水温の変動ですが、インド洋ダイポール指数を見ると(図4下段)、夏から秋にかけて負のインド洋ダイポール現象が発達してピークを迎え、その後、冬に減衰する見込みです。特に、インド洋ダイポール指数が-1.5度を下回る極めて強い負のインド洋ダイポール現象を、図4下の36個の実験のうち約3割が予測しています。こうした傾向は、他の研究機関の予測結果でも見られています。

 

日本を含む世界の気候には、太平洋に発生するエルニーニョ・ラニーニャ現象だけでなく、インド洋や他の海域の水温変動もまた、影響を及ぼすことがわかっています。海洋起源の気候変動現象がこれからどのように変動し、世界の気候にどのような影響を与えるか、今後注意してみていきたいと思います。