2022年11月号 冬の天候は?

 

 

 

写真 秋の紅葉(プリンストン)

皆さま、いかがお過ごしでしょうか?米国プリンストンでは、紅葉がピークを迎えております(写真)。日中は青空に囲まれて快適ですが、朝晩は10度以下となり、寒さが増してきております。これから季節が変わりますが、冬の天候が気になりますね。

SINTEX-Fの季節予測によると、今年の12月から来年の2月は、世界の多くの地域で、気温が平年より高くなる見込みです。一方で、アラスカ、カナダ西部、南米北部、オーストラリアの一部、アフリカ南部、インド、インドシナ、インドネシアの一部などでは、気温が低くなる見込みです。

また、アラスカ南岸、アメリカ、メキシコ、ラプラタ、オーストラリア北西部、東アフリカ、ヨーロッパ、東アジア、ユーラシアの一部、インドネシアなどでは雨が平年より少なく、カナダ、南米北部、オーストラリア東部、中央アフリカ、アフリカ南部、ヨーロッパ北部、ユーラシアの一部、フィリピンなどでは、雨が平年より多い見込みです。

原因の1つとして、海水温の変動が挙げられます。太平洋の熱帯域では、中央部から東部で海水温が平年より低く、西部で高くなる、ラニーニャ現象のような状況が減衰しながら続く見込みです。

図1 2022年12月から2023年2月までに予測される地上気温の平年差(ºC)。予測開始日は11月1日。

今年の12月から来年の2月までに予測される世界の気温を見てみましょう。SINTEX-Fの予測によると、世界の多くの地域において、気温が平年より高くなる見込みです。一方で、アラスカ、カナダ西部、南米北部、豪州の一部、アフリカ南部、インド、インドシナ、インドネシアの一部などでは、気温が平年より低くなる見込みです(図1)。

 

図2:2022年12月から2023年2月までに予測される降水量の平年差(mm/日)。予測開始日は11月1日。

 

次に、今年の12月から来年の2月までに予測される世界の降水量を見てみましょう。SINTEX-Fの予測によると、アラスカ南岸、アメリカ、メキシコ、ラプラタ、オーストラリア北西部、東アフリカ、ヨーロッパ、東アジア、ユーラシアの一部、インドネシアなどでは雨が平年より少なくなる見込みです(図2)。一方、カナダ、南米北部、オーストラリア東部、中央アフリカ、アフリカ南部、ヨーロッパ北部、ユーラシアの一部、フィリピンなどでは、雨が平年より多い予測となっています。

 

また、日本の冬は気温が平年より高く、降水量が平年より少なくなる見込みです。ただし、中高緯度の予測精度には限界がありますので、今後の情報に十分に注意されてください。

 

今年の12月から来年の2月までの海面水温は?

図3:2022年12月から2023年2月までに予測される海面水温の平年差(ºC)。予測開始日は11月1日。

日々の天気と異なり、季節を決める気候の変動には海水温が大きく関わっています(参照:季節予測とは?)。特に、熱帯は他の海域に比べて海面水温が高く、わずかな水温の変動が世界の気候に影響をもたらします。

SINTEX-Fの予測によると、今年の12月から来年の2月まで太平洋の熱帯域は、中央部から東部で海水温が平年より低く、西部で高くなるラニーニャ現象のような状況が弱く続く見込みです(図3)。一方、インド洋の熱帯域は、今年の夏から秋にかけて発達していた、東部で海水温が平年より高く、西部で低くなる、負のインド洋ダイポール現象が減衰し、平年並みの状況に戻る見込みです。

図4:2022年11月以降に予測される、エルニーニョ指数とインド洋ダイポール指数(ºC)。予測開始日は11月1日。黒線が観測値、複数のカラー線が36個の異なる条件で実験した予測値で、紫線が36個の予測値の平均値。

 

それでは、これらの海水温の変動が今後どのように発達、減衰していくのでしょうか?そこで、海水温の変動が最もよく現れる海域で平均した海水温の平年差を見てみましょう。熱帯太平洋のエルニーニョ指数を見ると(図4上段)、今年の12月から来年の1月にかけて-0.5度を下回り、ラニーニャ現象のような状況が減衰しながら続く見込みです。来年の2月から3月にかけて平年並みの状況となり、その後、来年の6月から0.5度を上回り、エルニーニョ現象が発生する見込みです。こうした傾向は、他の研究機関の予測結果でも見られています。

 

一方、インド洋の海水温の変動ですが、インド洋ダイポール指数を見ると(図4下段)、今年の10月まで-0.5度を下回り、負のインド洋ダイポール現象が発達していましたが、11月から12月にかけて減衰し、平年並みの状況に戻る見込みです。こうした傾向は、他の研究機関の予測結果でも見られています。

 

日本を含む世界の気候には、太平洋に発生するエルニーニョ・ラニーニャ現象だけでなく、インド洋や他の海域の水温変動もまた、影響を及ぼすことがわかっています。海洋起源の気候変動現象がこれからどのように変動し、世界の気候にどのような影響を与えるか、今後注意してみていきたいと思います。