2023年2月号 春の天候は?

写真:冬の紅梅(プリンストン大学)

皆さま、いかがお過ごしでしょうか?米国プリンストンでは、冬の寒さが和らいでおります。大学のキャンパスでは、紅梅が見事に咲いており、春の訪れが待ち遠しいです。これから季節が変わりますが、春の天候が気になりますね。

 

SINTEX-Fの季節予測によると、今年の3月から5月は、世界の多くの地域で、気温が平年より高くなる見込みです。一方で、アラスカ、カナダ西部、ブラジルとインドの一部などでは、気温が低くなる見込みです。

 

また、アメリカ南部、メキシコ、南米北部、ラプラタ、チリ、オーストラリア、モザンビーク、西アフリカ、黒海周辺、インドネシア、インドシナ、中国の一部などでは雨が平年より少なく、アラスカ、カナダの一部、南米中部、中央アフリカ、南アフリカ東部、マダガスカル北部、モーリシャス、ヨーロッパの一部、ロシアの一部、ネパール、ブータン、パキスタン、中国の一部、朝鮮半島、フィリピンなどでは、雨が平年より多い見込みです。

 

原因の1つとして、海水温の変動が挙げられます。太平洋の熱帯域では、中央部から東部で海水温が平年より高くなる、エルニーニョ現象が発生する見込みです。

図1 2023年3月から5月までに予測される地上気温の平年差(ºC)。予測開始日は2月1日。

今年の3月から5月までに予測される世界の気温を見てみましょう。SINTEX-Fの予測によると、世界の多くの地域において、気温が平年より高くなる見込みです。一方で、アラスカ、カナダ西部、ブラジルとインドの一部などでは、気温が平年より低くなる見込みです(図1)。

 

 

図2:2023年3月から5月までに予測される降水量の平年差(mm/日)。予測開始日は2月1日。

 

 

次に、今年の3月から5月までに予測される世界の降水量を見てみましょう。SINTEX-Fの予測によると、アメリカ南部、メキシコ、南米北部、ラプラタ、チリ、オーストラリア、モザンビーク、西アフリカ、黒海周辺、インドネシア、インドシナ、中国の一部などでは雨が平年より少なくなる見込みです(図2)。一方、アラスカ、カナダの一部、南米中部、中央アフリカ、南アフリカ東部、マダガスカル北部、モーリシャス、ヨーロッパの一部、ロシアの一部、ネパール、ブータン、パキスタン、中国の一部、朝鮮半島、フィリピンなどでは、雨が平年より多い予測となっています。

 

また、日本の春は気温が平年より高く、北海道や九州・沖縄地方では降水量が平年より少なく、その他の地域では多くなる見込みです。ただし、中高緯度の予測精度には限界がありますので、今後の情報に十分に注意されてください。

 

今年の3月から5月までの海面水温は?

 

図3:2023年3月から5月までに予測される海面水温の平年差(ºC)。予測開始日は2月1日。

 

日々の天気と異なり、季節を決める気候の変動には海水温が大きく関わっています(参照:季節予測とは?)。特に、熱帯は他の海域に比べて海面水温が高く、わずかな水温の変動が世界の気候に影響をもたらします。

 

SINTEX-Fの予測によると、今年の3月から5月まで太平洋の熱帯域では、中央部から東部で海水温が平年より高くなるエルニーニョ現象が発生する見込みです(図3)。一方、インド洋の熱帯域では、海水温が平年並みの状況となる見込みです。

 

 

図4:2023年2月以降に予測される、エルニーニョ指数とインド洋ダイポール指数(ºC)。予測開始日は2月1日。黒線が観測値、複数のカラー線が18個の異なる条件で実験した予測値で、紫線が18個の予測値の平均値。

 

それでは、これらの海水温の変動が今後どのように発達、減衰していくのでしょうか?そこで、海水温の変動が最もよく現れる海域で平均した海水温の平年差を見てみましょう。熱帯太平洋のエルニーニョ指数を見ると(図4上段)、今年の2月には-0.5度を上回り、ラニーニャ現象のような状況が減衰し、平年並みの状況となる見込みです。その後、5月から0.5度を上回り、エルニーニョ現象が発生する見込みです。こうした傾向は、他の一部の研究機関の予測結果でも見られています。

 

一方、インド洋の海水温の変動ですが、インド洋ダイポール指数を見ると(図4下段)、しばらく平年並みの状況が続きますが、7月から0.5度を上回り、正のインド洋ダイポール現象が発生する見込みです。ただし、予測値(18個のカラー線)にばらつきが見られるため、今後の情報に十分に注意されてください。こうした傾向は、他の一部の研究機関の予測結果でも見られています。

 

日本を含む世界の気候には、太平洋に発生するエルニーニョ・ラニーニャ現象だけでなく、インド洋や他の海域の水温変動もまた、影響を及ぼすことがわかっています。海洋起源の気候変動現象がこれからどのように変動し、世界の気候にどのような影響を与えるか、今後注意してみていきたいと思います。