2023年8月号 秋の天候は?

 

写真:熱波にさらされるフロリダの海岸(Key West)

皆さま、いかがお過ごしでしょうか?今年の夏はアメリカも暑く、フロリダの海岸は熱波に見舞われています。7月には海水温が38度まで記録的に上がり(参照)、珊瑚の白化など、海の生態系への影響が心配です。これから秋になり、温度が下がることを願いますが、日本を含め世界の天候が気になります。

 

SINTEX-Fの季節予測によると、今年の9月から11月は、世界の多くの地域で、気温が平年より高くなる見込みです。特に北極海では、気温が平年より高くなる見込みです。

 

また、アメリカの一部(ハワイを含む)、南米北部、オーストラリア東部、ウガンダ、タンザニア、インドネシア、フィリピン、インドシナの一部などでは雨が平年より少なく、アラスカ南部、カリブ海、ラプラタ、アフリカ西部と中部、東北端(アフリカの角)、インドの一部、スリランカ、ネパール、ブータン、東アジアの一部などでは、雨が平年より多くなる見込みです。

 

原因の1つとして、海水温の変動が挙げられます。太平洋の熱帯域では、中央部から東部で海水温が平年より高くなる、が発達する見込みです。また、インド洋の熱帯域では、東部で海水温が平年より低く、西部で高くなるが発達する見込みです。これら2つの現象の発生に伴い、特にインドネシアとオーストラリア東部では、雨が平年より少なくなる見込みです。

 

今年の9月から11月までの気温と降水量は?

図1 2023年9月から11月までに予測される地上気温の平年差(ºC)。予測開始日は8月1日。

 

今年の9月から11月までに予測される世界の気温を見てみましょう。SINTEX-Fの予測によると、世界の多くの地域において、気温が平年より高くなる見込みです(図1)。特に北極海では、気温が平年より高くなる見込みです。

 

図2:2023年9月から11月までに予測される降水量の平年差(mm/日)。予測開始日は8月1日。

次に、今年の9月から11月までに予測される世界の降水量を見てみましょう。SINTEX-Fの予測によると、アメリカの一部(ハワイを含む)、南米北部、オーストラリア東部、ウガンダ、タンザニア、インドネシア、フィリピン、インドシナの一部などでは雨が平年より少なくなる見込みです(図2)。一方、アラスカ南部、カリブ海、ラプラタ、アフリカ西部と中部、東北端(アフリカの角)、インドの一部、スリランカ、ネパール、ブータン、東アジアの一部などでは、雨が平年より多い予測となっています。

 

また、日本の夏は気温が平年より高く、西日本で降水量が平年より多くなる見込みです。ただし、中高緯度の予測精度には限界がありますので、今後の情報に十分に注意されてください。

 

今年の9月から11月までの海面水温は?

図3:2023年9月から11月までに予測される海面水温の平年差(ºC)。予測開始日は8月1日。

日々の天気と異なり、季節を決める気候の変動には海水温が大きく関わっています(参照:季節予測とは?)。特に、熱帯は他の海域に比べて海面水温が高く、わずかな水温の変動が世界の気候に影響をもたらします。

 

SINTEX-Fの予測によると、今年の9月から11月まで太平洋の熱帯域では、中央部から東部で海水温が平年より高くなるが発達する見込みです(図3)。一方、インド洋の熱帯域では、東部で海水温が平年より低く、西部で高くなるが発達する見込みです。これら2つの現象の発生に伴い、特にインドネシアとオーストラリア東部では、雨が平年より少なくなる見込みです(図2)。

 

図4:2023年8月以降に予測される、エルニーニョ指数とインド洋ダイポール指数(ºC)。予測開始日は8月1日。黒線が観測値、複数のカラー線が36個の異なる条件で実験した予測値で、紫線が36個の予測値の平均値。

 

それでは、これらの海水温の変動が今後どのように発達、減衰していくのでしょうか?そこで、海水温の変動が最もよく現れる海域で平均した海水温の平年差を見てみましょう。熱帯太平洋のエルニーニョ指数を見ると(図4上段)、エルニーニョ現象は今年の秋にピークに達し、その後、来年の春まで減衰しながら持続する見込みです。ただし、予測値(36個のカラー線)の振幅にばらつきが見られるため、今後の情報に注意されてください。こうした傾向は、他の一部の研究機関の予測結果でも見られています。

 

一方、インド洋の海水温の変動ですが、インド洋ダイポール指数を見ると(図4下段)、正のインド洋ダイポール現象は今年の9月にピークに達し、その後、冬に減衰する見込みです。こうした傾向は、他の一部の研究機関の予測結果でも見られています。

 

日本を含む世界の気候には、太平洋に発生するエルニーニョ・ラニーニャ現象だけでなく、インド洋や他の海域の水温変動もまた、影響を及ぼすことがわかっています。海洋起源の気候変動現象がこれからどのように変動し、世界の気候にどのような影響を与えるか、今後注意してみていきたいと思います。