2016年5月号:夏の海に注目!

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写真:今年の夏の海はどうなるのでしょう?

きれいな海ですね。皆さま、GWはいかが過ごされましたか?海の研究所なので、海の写真を撮ってきました。泳ぐにはまだ冷たかったのですが、実は海の温度が世界の気候にとって重要な役割をしています。これからの6-8月、太平洋ではラニーニャ現象が、インド洋では負のインド洋ダイポール現象が少しずつ発達してきそうです。ラニーニャ現象は、日本付近に猛暑をもたらす傾向がありますが、負のインド洋ダイポール現象は、不順な夏をもたらす傾向があります。2つの現象がこれからどのように発達していくか、海の温度に注目して6-8月の気候について見てみましょう。

今年の6-8月の気温と降水量は?

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図1 2016年6月から8月までの地上気温の平年差(ºC)。 予測開始日は5月1日。

まずは、今年の6-8月に予測される世界の気温です。SINTEX-Fの予測によると、気温は世界各地で平年より暖かくなりそうです(図1)。一方で、中国北東部や南米の南部では、平年より寒くなりそうです。これらの傾向は、先月号の予測から大きく変わっていません。

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図2 2016年6月から8月までの降水量の平年差(mm/日)。予測開始日は5月1日。

 

続いて、今年の6-8月に予測される世界の降水量です。SINTEX-Fの予測によると、東アフリカやインドの一部で雨が平年より少なくなりそうです(図2)。一方で、インドネシアやオーストラリアでは、雨が平年より多くなりそうです。これらの傾向もまた、先月号の予測から大きく変わっていません。

今年の6-8月の海の温度は?

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図3 2016年6月から8月までの海面水温の平年差(ºC)。 予測開始日は5月1日。

 

次に、世界の海の水温について注目してみましょう。日々の天気と異なり、季節を決める気候の変動には海の状況、特に、海面水温が大きく関わっています(参照:季節予測とは?)。熱帯太平洋では昨年より、中央部と東部で水温が平年より高くなる「エルニーニョ現象」が発生していましたが、現在弱まりつつあります。今年の6-8月にはほぼ終息し、熱帯太平洋の東部で海面水温が平年よりわずかに冷たくなりそうです(図3)。その後、年末に向かって、熱帯太平洋の東部で水温が平年より冷たく、西部で暖かくなる「ラニーニャ現象」に移る可能性があります。

一方、インド洋ですが、今年の6-8月は全域で水温が平年よりも高い状況が続きそうです(図3)。しかし、よく注意して見ると、インド洋の東部(スマトラ島沖)のほうが西部(東アフリカ沖)に比べて水温は温かくなっています。これは、「負のインド洋ダイポール現象」と思われるもので、インド洋の東部で水温が高くなる状態が9-11月まで続くと予測しています。

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図4 2016年5月以降に予測される、ニーニョ3.4指数とインド洋ダイポール指数(ºC)。 予測開始日は5月1日。青が観測値、グレーが9つの異なる初期条件で計算した予測値、赤が9つのグレーの予測値の平均値。

 

それでは、ラニーニャ現象負のインド洋ダイポール現象が、 これからどのように発達していくのでしょうか?図4は、2つの現象がそれぞれ最もよく現れる海域で計算された海面水温の平年差になります(図4)。ニー ニョ3.4指数は、赤の予測値の平均をみると、7月以降にマイナス0.5度を越えて、年末に向かってラニーニャ現象が徐々に発達することを予測していま す。一方で、インド洋ダイポール指数は、7月から11月にかけてマイナス0.5度を越えて、負のインド洋ダイポール現象が徐々に発達することを予測してい ます。その後、年末にかけてインド洋ダイポール現象が減衰しそうです。

日本を含む世界の気候には、太平洋に発生するエルニーニョ現象やラニーニャ現象だけでなく、インド洋に発生するインド洋ダイポール現象も大きく影響を及ぼすことが分かっています。今年の6-8月は、ラニーニャ現象負のインド洋ダイポール現象が 徐々に発達してきそうです。ラニーニャ現象は、日本付近に猛暑をもたらす傾向がありますが、負のインド洋ダイポール現象は不順な夏をもたらす傾向がありま す。海洋起源の2つの気候変動現象がこれからどのように発達し、日本付近にどちらの影響がより強く現れるか、今後注意して見ていきましょう!