まとめ
見通し(長期予測)
海洋予測モデルJCOPE2Mで、約2か月先までの予測を行っています。図2はJCOPE2Mによる水深100メートル[2]での5月28日の水温(色、℃)と流れ(矢印)です。赤色が黒潮の影響を受けた暖かい水温で、青色が親潮の影響を受けた冷たい水温です。親潮の影響を受けている範囲の指標として、水温5°Cに太い黒線を引いています
北海道から東北沖に暖水渦Aが存在しており、水温5°C線(黒太線)は暖水渦Aのために平年の位置(青線)より北にあり、暖水渦の影響で沿岸寄りの親潮の南下①が弱いことを意味しています。一方、暖水渦Aの東では、水温5°C線(黒太線)は平年の位置(青線)より南にあり、暖水渦Bがあるものの、沖側の親潮②は平年より南下しています。
仙台管区気象台によれば、北海道から東北沿岸にかけて親潮が影響する面積(親潮面積)の3月から4月の値は、暖水渦の影響で1982 年の統計開始以降で最も小さくなっています[3]。
図3は図2に対応する2020年5月28日から8月6日までの予測をアニメーションにしたものです。予測では、暖水渦Aが弱まりつつも北東に移動することで、沿岸親潮の南下は弱い状況が続くと予測しています。暖水渦Bは弱まりつつ南西に後退することから、平年より強い状態が続きそうです。
日本海を見ると、水温5度線(黒線)が平年(青線)より北にあることから(図2)、日本海は平年より水温が高い状態です。予測でも平年より高い状況が続きます(図3)。
図3: 図2に対応する2020年5月28日から8月6日までの予測のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。
詳細(短期予測)
より高い水平分解能のモデルJCOPE-T DAで短期予測(約10日先)も行っています。毎日更新されるJCOPE-T DAの予測は、JAXAが提供を開始した可視化サイトで見ることができます。図の見方は「JAXAと共同で新しい海洋予測を開始」で解説しています。
図4は「1. 人工衛星「ひまわり」観測とJCOPE-T DAを比較するサイト」で親潮付近を見たものです。時間は2020年5月31日10時台(日本時間)の1時間平均で、左が気象衛星「ひまわり8号」による海面水温の観測、右がJCOPE-T-DAによる海面水温の推定値です。
暖水渦Aや暖水渦Bによって親潮の流れが影響している様子が見られます[4]。
図5は2020年6月1日午前9時から6月11日午前9時までの予測のアニメーションです。左が海面、右が水深100mです。右の水深100mの図には、親潮の勢力の範囲の指標として、水温5℃線を黒太線線にしています。JCOPE-T DAは潮の満ち引きも計算しているので、1時間ごとの図でアニメーションにしています。
最新の予測は上記JAXAの可視化サイトでご確認ください。
図5: 2020年6月1日午前9時から6月11日午前9時までの1時間ごとの予測のアニメーション。左が海面、右が水深100m。矢印(ベクトル)が海面の流れの向きと強さ(メートル毎秒)。色が海面水温(℃)。温度の等温線も2℃ごとに白色で加えてある。水深100mの右の図には親潮の勢力の指標として水温5℃の等温線も黒太線で加えている。クリックして操作してください。全画面表示にしたり、途中で停止したりできます。
黒潮親潮ウォッチでは、親潮の現状について月に一回程度お知らせします。親潮に関する解説一覧はこちらです。 JCOPE-T-DAによる短期予測はJAXAのサイトで見ることができます。 4日毎に更新されるJCOPE2Mによる親潮の長期解析・予測図はJCOPE のweb pageで見られます。親潮関係の図の見方は2017年1月18日号と2017年2月1日号で解説しています。
- [1]親潮第一分枝・第二分枝については親潮はどんな流路になっているの?で解説しています↩
- [2]天気の影響を受けやすい海面よりも海流の状態を反映していると考えられます。↩
- [3]「3~4月の親潮面積が最小を記録しました」(pdf, 仙台管区気象台, 2020年5月28日)↩
- [4]モデルの暖水渦Aの構造は「ひまわり」の観測に比べて細かすぎるかもしれません。↩