毎月、過去1カ月の予測を検証しています[1]。小蛇行の東への移動を過小評価していました。 |
予測と実際(長期予測)
今回は2020年10月28日号の、10月23日から予測した11月20日までの結果を検証します。
先月は現在は3年2か月以上続いた黒潮大蛇行が終わっていると言える状態でした(コラム「黒潮大蛇行が終わる!?」)。その後、九州の東から四国の南に存在する小蛇行が12月にかけて通過すると潮岬の南を通過すると予測していましたが、あまり発達しないとしていました。
図1左は、10月23日から予測した11月20日の黒潮の状態です。図1右は、観測値を取り入れて実際に近いと考えられる11月20日の状態です。図2は、同じく予測値(左)と実際(右)の比較を、10月23日から11月20日までのアニメーションにしたものです。
小蛇行Dは11月末の段階ではまだ潮岬の南を通過しないと予測していましたが(図1左)、実際には潮岬まで達して潮岬で離岸しています(図1右)。これにより、実際には黒潮大蛇行が再開した形になっています。
以前の大蛇行が渦Aとしてちぎれて離れつつあることは予測していましたが、遠ざかる速さは実際よりも大きく予測していました。
小蛇行Dの存在のため、四国の室戸岬でも足摺岬でも大きな離岸が続くことは予測できていました。
図2: 2020年10月23日から11月20日までの予測(左)と実際(右)の比較のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。
黒潮大蛇行を作る渦の強さ(長期予測)
大蛇行を作る渦の強さを数値化するために、2018/3/14号「深海から黒潮大蛇行のこれからを予測する」で、深層の冷水面積(水深1000mの水温3℃以下の海域の面積)を渦の強さの指標として導入しました。長期予測モデルJCOPE2Mをアップデートし、指標を水温3.3℃以下に変更しています。
図3の点線は、2020年10月28日号の10月23日からの予測による1か月の冷水面積の変化です。渦がちぎれてしだいに遠ざかると予測していたので、ゆっくりとした低下を予測していました。実際には渦Aは予測よりも遠ざからず、小蛇行Dの進行が予測よりも早かったので、上昇しています。ただ7月までの強さを回復しているわけではありません。
- [1]2017/7/12号「黒潮流路はどれくらい先まで予測できるのか」でも解説しているように、1ヶ月はある程度の精度をもって予測できる限界に近い長さです。毎月の検証では、限界に挑戦するため1ヶ月先の予測の検証をしています。仮に検証で1ヶ月先の予測が当たっていない部分があっても、たとえば1週間先の予測が外れ続けたという意味ではないことにご注意ください。↩