「海洋速報」黒潮流軸とモデル予測の比較(2021年1月20日)

ポイント1. 黒潮流路「短期(10日)予測」は黒潮大蛇行が南に細く伸びる様子を予測できていました。暖水塊の紀伊半島東側への接近も予測できていました。

ポイント2. 黒潮「長期(1か月)予測」は1月上旬の黒潮大蛇行の位置を、海洋速報流軸より西寄りに予測していましたが、最近の予測になるにつれて予測が海洋速報流軸に近づいていることがわかりました。

短期予測

今回は

2021年1月22日までの黒潮「短期」予測 (2021年1月13日発表) で示した予測結果にほぼ対応している結果(JCOPE-T DAモデルを紹介)について示します。まず現況予測結果を図1に示します。

Fig1

図1. 「海洋速報」黒潮流軸(黒線)とJCOPE-T DA黒潮流軸(緑線)。2021年1月13日。左上の数字は予測開始日を示す。

現況予測の結果は(緑線)は黒潮大蛇行については海洋速報の結果(黒線)をほぼ再現できていたことがわかります。九州南東沖では海洋速報に比べやや南寄りになっていて、伊豆諸島の東では南に少し蛇行する様子が海洋速報と違います。ただ、2021年1月22日までの黒潮「短期」予測 (2021年1月13日発表)の図1を見ると、モデルでも南に飛び出る渦としておおまかには再現されていたことがわかります。その後の短期予測(図2)では

Fig.2

図2. 「海洋速報」黒潮流軸(黒線)とJCOPE-T DA黒潮流軸(緑線)。2021年1月17日。左上の数字は予測開始日を示す。

大蛇行の先端が細く伸びる様子を予測できていました。伊豆諸島の東では2021年1月22日までの黒潮「短期」予測 (2021年1月13日発表)  の図2にあるように渦が切り離されるように予測していましたがその点は海洋速報と違うようです。もうひとつ、2021年1月22日までの黒潮「短期」予測 (2021年1月13日発表)を見ていて気になるのが遠州灘沖の暖水塊Eですが、これは海洋速報ではわかりません。衛星海面水温画像 JAXA「ひまわりモニタ」を見てみると(図3)、実際に暖水塊Eが接近している様子がわかります。図3には伊豆諸島の東にある渦も見えています。

Fig3

図3. 「ひまわりモニタ」日最小SST。2021年1月17日。

長期予測

次に、長期予測(JCOPE2Mモデルの結果を紹介)

2021年2月26日までの黒潮「長期」予測(2020年12月23日発表)

2021年3月2日までの黒潮「長期」予測(2020年12月30日発表)

におおよそ対応する結果の予測を見てみます(図4)。

図4. 「海洋速報」黒潮流軸(黒線)とJCOPE2M黒潮流軸(色線)。左:2021年1月13日。右:2021年1月17日。左上の数字は予測開始日を示す。

図4から、黒潮大蛇行の位置を海洋速報流軸に比べてやや西寄りに予測しすぎていましたが、最近の予測になるにつれて海洋速報流軸に近づいている様子がわかります。伊豆諸島東の蛇行も傾向としては表現されていました。また、昨年、黒潮大蛇行から切り離されて西向きに移動し、現在は九州南東方沖にある渦が黒潮に近づいている様子が予測されています。2020年12月18日からの予測(図4右)では、2021年1月17日には既に黒潮にくっつくことが予測されていましたがまだそうなっていないようです。今後の成り行きが注目されます。引き続き「黒潮親潮ウォッチ」で紹介する予測にご注目ください。