取材協力: NHK ダークサイドミステリー「謎の無人島 鳥島サバイバル〜人の生命を試す島〜」(2022/6/7放送後解説追記)

取材協力

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番組名 ダークサイドミステリー「謎の無人島 鳥島サバイバル〜人の生命を試す島〜」
放送日時 ①6月2日(木) 午後9時5分~

②再放送 6月6日(月) 午後11時~

放送局 NHK BSプレミアム
内容 必ず故郷に帰る!水も草木もない地獄の火山島に漂流し19年も生き延びた男たち。いったいどうやって?過酷な島を生きた人間の究極の知恵と勇気と絆とは?生命の感動秘話。
番組サイト https://www.nhk.jp/p/darkside/ts/4847XJM6K8/episode/te/V3VYWGYR33/

放送後解説

  • 黒潮の流れの映像としてAPL Virtual Earthが使われました[1]
  • 放送で述べられていましたが、ジョン万次郎を含めて高知付近から鳥島に漂流した時は黒潮大蛇行だったのではないかという説があります(参考資料1)。放送では使われていませんが、高知沖から漂流した場合のシミュレーションをしてみました。当時の海流がどうだったかはデータがないので、1993年から現在までの海流から177パターンを抽出してシミュレーションに使っています。また、ジョン万次郎を含めて冬に遭難が多いことから(参考資料3)、2月の平均的な風の効果も入れています。漂流は10日間としました。結果が図1です。やはり黒潮が大きく蛇行している時に鳥島に近づきやすいことが分かりました。また10日ぐらいの時間スケールで鳥島に近づくことも確かめられました。ジョン万次郎の場合、7日の漂流でした(参考資料1)。
    Fig1

    図1: 高知沖で漂流した場合の漂流結果。黒線が177ケースの漂流軌跡。が鳥島の位置。

     

  • それに対して、番組の中心の話題である遠州新居の漂流者(船頭・左太夫ら)は、銚子沖で漂流が始まり、56日間漂流したとされています(参考資料1)。そこで、放送でも紹介された銚子沖からの漂流シミュレーションをしてみました(図2)。 漂流期間は60日としました。大半は黒潮続流で東に流されてしまいますが、4例ほど鳥島に近づく場合がありました(色のついた線)。銚子沖から鳥島に流れ着くのは、黒潮続流から切り離された渦に乗った、まれなケースだろうと推定されます。また、図1の場合に比べて、漂流時間が長くなります。

    Fig2

    図2: 銚子沖で漂流した場合の漂流結果。177ケースの漂流軌跡の内、色をつけた線が鳥島に近づいたケース。黒線がその他。が鳥島の位置。は父島。

参考資料

1) “中濱万次郎 -「アメリカ」を初めて伝えた日本人” 中濱博 著  (冨山房インターナショナル)
ジョン万次郎(中濱万次郎)の漂流した時、黒潮は大蛇行していたという説を提唱しています。巻末特別項目に、ジョン万次郎のケースも含めた、鳥島漂流19例のまとめがあります。

2) “漂流の島 -江戸時代の鳥島漂流民たちを追う” 髙橋大輔 著 (草思社)
鳥島と漂流者たちについて詳しいです。

3) ”気象学から見た漂流記” 倉嶋厚 著 (日本庶民生活史料集成 第5巻「漂流」p.864-869、三一書房)
統計的に漂流は圧倒的に冬が多く、正月用品や取り立てた年貢米を運ぶ季節にあたっているとともに、北西季節風の最盛期であることが原因であろうと考察しています。


過去の漂流関係の取材協力

他、取材協力した番組はこちら

  1. [1]APL Virtual Earthでは2017年の一部の海流しか見ることができません。現在JAXAと共同で、予測海流を見ることができるサイトを準備中です。