JCOPEのホームページでは、黒潮親潮ウォッチで紹介している図以外に、様々な解析・予測画像を週に2回[1]更新し、公開しています。この解説では、連載「JCOPE2解析・予測画像の見方」の続きで、その解析・予測画像の見方を説明します。
「JCOPE2解析・予測画像(英語)」のページに移動すると(移動方法は「JCOPE2解析・予測画像の見方(1)」参照)、それぞれの日付毎にいくつかの図を見られます。上から順に
- 伊豆諸島周辺の海面水温(等値線)と流れ(矢印)
- 東北・太平洋沖の海面水温(等値線)と流れ(矢印)
- 北海道東北・太平洋沖の水深100メートルの海水温(等値線・色)
- 黒潮域の水深200メートルの海水温(色)と流れ(矢印)
- 北西太平洋(JCOPE2M計算全領域)の海面水温(色)とアニメーション
- 北西太平洋(JCOPE2M計算全領域)の海面高度(等値線・色)(今回)
- 東シナ海の海面塩分
です。今回は「6. 北西太平洋(JCOPE2M計算全領域)の海面高度(等値線・色)」の解説です。
2017年5月11日の日付を選んで、上から6番目の図を見ると、図1のような西太平洋の図があります。黒潮親潮ウォッチでは、普段は日本周辺のJCOPE2Mの予測結果しか見せていませんが、実際には図1にしめされている西太平洋の広い範囲の予測を行っています。図1の色と等値線でしめされているのは、1日平均の海面高度(海面の高さ;メートル)です[2]。赤っぽい色が海面が高いところ、青っぽい色が海面の低いところです。
海面付近の海流は、海面高度の等値線に沿って流れる傾向があるという大事な性質があります。そのため、海面高度を見ることで海面付近の流れはおおよそわかります。それを説明したのが図2です。北半球では海流は海面高度が高い方を右[3]に見て流れます。つまり、海面高度の高いところのまわりを時計まわり[3]に流れます。海面高度が低いところでは反時計まわり[3]です。等値線が混んでいる(等値線の間隔が狭い)ところでは流れが強いという性質もあるので、等値線の混み具合で流れの強さもわかります。
上の図1で、特に等値線が混んでいるのが黒潮です。黒潮はフィリピン付近から北上し、日本南岸を流れ、黒潮続流につながっています。こうして、太平洋亜熱帯を海流が時計回りに循環している様子が海面高度からわかります。九州から四国にかけて、黒潮が岸から離れている様子(小蛇行;今週の現状参照)も見えています。亜寒帯には、等値線が少ないことから弱い流れであることがわかる親潮を含む循環(海面高度の低いところのまわりを反時計回り)が存在しています。
今回解説したように、海面高度は便利で大事な量です。そのため、毎週の黒潮予測の記事の図では、色で海面高度をしめしています。海面高度は、八丈島付近[4]や紀伊半島・潮岬[5]での黒潮接岸・離岸の判定にも使われます。海面高度には、まだまだ面白いことがたくさんあるので、後日また解説する予定です。
- [1]2016/12/16号解説参照。↩
- [2]この海面の高さには潮の満ち引きによる変化はふくまれていません。↩
- [3]南半球では逆になります。↩
- [4]2015/3/20号「黒潮が八丈島の南を流れているのをどうやって観測で確認するの?」。↩
- [5]2016/4/1号「潮岬への黒潮接岸判定法は?: 串本・浦神の潮位差」。↩