2022年10月1日までの黒潮「短期」予測 (2022年9月14日発表)

高分解能予測JCOPE-T DAの開始にともない、

を行っています。

ここでは10月1日までのJCOPE-T DAによる短期予測を解説します。短期予測では、黒潮の沿岸への影響がテーマです。

現状と予測

図1・2・3はJCOPE-T DAで計算した2022年9月11日・9月21日・10月1日の黒潮の状態です。水位0.3mの位置に太線を黒潮の流軸の推定値として加えています。

黒潮大蛇行(A)が続いています(長期予測も参照)。黒潮大蛇行を作っている冷水渦の動きが大きく、予測に不確実さがあります。いずれにせよ、黒潮大蛇行が継続する予測です。

蛇行の後の北上する流れ(B)は、やや西に移動した後、やや東に移動すると予測しています。大蛇行の渦の動きによって、予測が変化する可能性があります。

四国・足摺岬と室戸岬では離岸していますが、近づくと予測しています(図3, C)。

先週の予測にみられた低気圧による急激な温度変化は、天気予測が変化したため無くなりました。

図4は9月11日午前9時から10月1日午前9時までの予測のアニメーションです。JCOPE-T DAは潮の満ち引きも計算しているので、1時間毎の図でアニメーションにしています。

Fig1

図1: 2022年9月11日午前9時の予測値。矢印(ベクトル)は海面近くの流れの向き(メートル毎秒, 長いほど速い流れ)、色は海面温度(°C)。1度毎の等温線も薄く加えた。黒太線は日平均海面水位0.3mの等値線で、黒潮流軸の指標。青丸()が八丈島の位置。クリックすると拡大します。

 

Fig2

図2: 図1に同じ。ただし9月21日午前9時の予測値。

 

Fig3

図3: 図1に同じ。ただし10月1日午前9時の予測値。

 


図4: 2022年9月11日午前9時から10月1日午前9時までの1時間毎の予測のアニメーション。黒太線は日平均海面水位0.3mの等値線で、黒潮流軸の指標。クリックして操作してください。全画面表示にしたり、途中で停止したりできます。


沖縄周辺の台風11/12号による水温低下と予測

図5は9月4日午前9時から10月11日午前9時までのアニメーションです(9月11日から10月1日までは予測)。沖縄周辺では台風11/12号の通過によって海面水温が低下しました。図5はその様子を示しています。


図5: 2022年9月4日午前9時から10月1日午前9時までの1時間毎のアニメーション(9月11日から10月1日までは予測)。矢印(ベクトル)は海面近くの流れの向き(メートル毎秒, 長いほど速い流れ)、色は海面温度(°C)。全画面表示にしたり、途中で停止したりできます。

今週のハイライト: 海面と海面200mの水温の対比

リニューアル公開されたJAXAひまわりモニタ・海中天気予報のサイト (「JAXAひまわりモニタ・海中天気予報のサイトがリニューアル」)から特徴的な図を毎週紹介します。黒潮親潮ウォッチは1週間に一回の更新ですが、海中天気予報のサイトではほぼ毎日予測が更新されます。

図6と図7は予測モデル9月14日10時の水温で、図6が海面で、図7が水深200mです。

黒潮は周囲より水温の高い海流ですが、夏は太陽に照らされて周囲も水温が高くなるため、黒潮と周囲との境目がはっきりしません(図6A)。

それに比べて、水深200mでは大気からの影響を受けにくく、黒潮の位置がはっきりします(図7A)。図7では、黒潮が冷水を迂回して大蛇行している様子が良く見えます。水深200mで黒潮の境目がはっきりするため、海洋学では水深200mの水温が黒潮の位置を判定するのによく用いられます。例えば海上保安庁では、黒潮流路の北縁の位置の判定の一つに、海面下200m層の水温水平分布で概ね15~16℃の等値線が北側に混んでいる海域を使っています。

水深200mでは九州の南に冷水渦が見えますが(図7 B)、海面水温では見えません(図6)。この冷水渦は、長期予測、図1Dの渦に対応しています。

台風12号の影響は海面でも水深200mでも見えています(図6・7 C)。

Fig6

図6: 海洋モデルの海面(水深0m)での水温(色)と水温等値線(①と②で指定)。水温の色の幅は15℃か30℃にした(③で指定)。

 

Fig7

図7: 海洋モデルの水深200mでの水温(色)と水温等値線(①と②で指定)。水温の色の幅は5℃~20℃にした(③で指定)。

 



JCOPE-T DAは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の地球観測研究センター(EORC)と共同で、土曜日を除く毎日更新を行っています(解説参照)。