記録的な高水温 (親潮ウォッチ2022/12)

海洋予測モデルJCOPE2Mで、約2か月先までの予測を行っています。図1はJCOPE2Mによる水深100メートル[1]で11月10日の水温(色、℃)と流れ(矢印)です。赤色が黒潮の影響を受けた暖かい水温で、青色が親潮の影響を受けた冷たい水温です。親潮の影響を受けている範囲の指標として、水温5°Cに赤線を引いています。

暖水渦(A)が北海道の南東にあり、親潮が南下しにくい状況になっています。そのために例年より暖水が広がっています。近年は夏にこのような状況になることが多いです(「北海道・東北沖で海洋熱波が頻発していることが明らかに」参照)が、今年は夏が終わっても暖水渦の影響が続いています。気象庁の診断でも現時点で親潮の影響面積は例年に比べてかなり小さく、2020年・2021年に比べても親潮の影響が弱くなっています。黒潮続流も例年より北に位置しており、水温を高くしています。

これらの海流の影響により、気象庁によれば、11月の北海道南東方、本州東方の海面水温が、平年よりかなり高くなり、解析値のある1982年以降で11月としては最も高くなっています[2]。本州東方では9月以降、北海道南東方では10月以降、記録的に海面水温が高い状態が続きました。

図2、3は来年1月16日、来年2月16日の予測です。北海道の南東の暖水渦は継続すると予測しています。

日本海では北海道西部で暖水が平年以上に広がっており、それが続くと予測しています。

図4は2022年12月8日から来年2月16日までの予測をアニメーションにしたものです。

Fig1

図1: JCOPE2Mによる2022年12月8日の水深100メートルでの水温(色、℃)と流れ(矢印)。赤色が5°Cより高い黒潮の影響を受けた暖かい水温で、青色が5°Cより低い親潮の影響を受けた冷たい水温。親潮の影響を受けている範囲の指標として水温5°Cに太い赤線を引いた。青線は1993-2020年平均の水温5°C線で平年の親潮の影響範囲。

 

Fig2

図2: 図1に同じ。ただし2023年1月16日の予測。

 

Fig3

図3: 図1に同じ。ただし2023年2月16日の予測。

 


図4: 図1に対応する2022年12月8日から2023年2月16日までの予測のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。

今月のハイライト: 昨年より北上する黒潮からの暖水

JAXAひまわりモニタ・海中天気予報のサイト がリニューアル公開されました(「JAXAひまわりモニタ・海中天気予報のサイトがリニューアル」)。このサイトでは上の予測(JCOPE2M, 約9kmメッシュ)よりも高分解能のモデル(JCOPE-T DA, 約3km)の様々な図を見ることができます。モデルの結果と人工衛星「ひまわり」の図を重ねることもできます。

図5,6は、昨年と今年の11月28日の人工衛星「ひまわり」観測の海面水温(1日平均)です。昨年(図5)に比べて今年(図6)は黒潮・黒潮続流へと続く暖水の北上が大きいことがわかります。

Fig5

図5:昨年11月28日(日平均)の人工衛星「ひまわり」による水温分布(色)。水温の色の幅は6~25℃とした(②で指定)。

Fig6

図6:図5に同じ。ただし今年の図。

  1. [1]天気の影響を受けやすい海面よりも海流の状態を反映していると考えられます。
  2. [2]臨時診断表 北海道南東方、本州東方、日本海南部の海面水温が11月として過去最高」(2022年12月2日 気象庁発表)

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黒潮親潮ウォッチでは、親潮の現状について月に一回程度お知らせします。親潮に関する解説一覧はこちらです。 JCOPE-T-DAによる短期予測はJAXAのサイトで見ることができます。 4日毎に更新されるJCOPE2Mによる親潮の長期解析・予測図はJCOPE のweb pageで見られます。親潮関係の図の見方は2017年1月18日号2017年2月1日号で解説しています。