暖水渦の影響でサンマが不漁? (親潮ウォッチ2023/4)

見通し(長期予測)

海洋予測モデルJCOPE2Mで、約2か月先までの予測を行っています。図1はJCOPE2Mによる水深100メートル[1]で4月11日の水温(色、℃)と流れ(矢印)です。赤色が黒潮の影響を受けた暖かい水温で、青色が親潮の影響を受けた冷たい水温です。親潮の影響を受けている範囲の指標として、水温5°Cに赤線を引いています。

親潮域に暖水渦(A, B)があり、親潮が南下しにくい状況です(図1, 図5も参照)。そのために例年より暖水が広がっています。黒潮続流(C)も例年に比べて北に偏っています。暖水渦の影響は残り(図2~3)、東北沖で水温が高い状況が続きそうです。黒潮続流の位置はやや南に下がると予測しています。

国立研究開発法人 水産研究・教育機構は近年のサンマの不漁の原因として親潮の弱化とそれに伴う道東・三陸沖の水温の上昇があると考えられると発表しています(「サンマの不漁要因と海洋環境との関係について」, 2023年4月7日)。このような温暖化は2010年に突然起きましたが、この温暖化については私たちもプレス発表をしています(「北海道・東北沖で海洋熱波が頻発していることが明らかに―海洋熱波とブリの漁獲量にも関連性―」 2021年1月14日)。

日本海では北海道西部で暖水が平年以上に広がっており、それが続くという予測です(D)。

図4は2023年4月11日から6月20日までの予測をアニメーションにしたものです。

Fig1

図1: JCOPE2Mによる2023年4月11日の水深100メートルでの水温(色、℃)と流れ(矢印)。赤色が5°Cより高い黒潮の影響を受けた暖かい水温で、青色が5°Cより低い親潮の影響を受けた冷たい水温。親潮の影響を受けている範囲の指標として水温5°Cに太い赤線を引いた。青線は1993-2020年平均の水温5°C線で平年の親潮の影響範囲。

 

Fig2

図2: 図1に同じ。ただし2023年5月20日の予測。

 

Fig3

図3: 図1に同じ。ただし2023年6月20日の予測。

 


図4: 図1に対応する2023年4月11日から6月20日までの予測のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。

 

今月のハイライト: 親潮域の暖水渦と黒潮続流

JAXAひまわりモニタ・海中天気予報のサイト がリニューアル公開されました(「JAXAひまわりモニタ・海中天気予報のサイトがリニューアル」)。このサイトでは上の予測(JCOPE2M, 約9kmメッシュ)よりも高分解能のモデル(JCOPE-T DA, 約3km)の様々な図を見ることができます。モデルの結果と人工衛星「ひまわり」の図を重ねることもできます。

図5は、4月16日の「ひまわり」観測の海面水温とモデルによる流速の推定です。

黒潮続流はかなり北まで流れており、岩手県付近まで達しています(A)。その北には時計回りの暖水渦(B)があることもうかがえます。

Fig5

図5:4月16日午後9時の人工衛星「ひまわり」による水温分布(色)とモデルによる流れ(矢印)(①で指定)。水温の色の幅は5~20℃とした(②で指定)。

 


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黒潮親潮ウォッチでは、親潮の現状について月に一回程度お知らせします。親潮に関する解説一覧はこちらです。 JCOPE-T-DAによる短期予測はJAXAのサイトで見ることができます。 4日毎に更新されるJCOPE2Mによる親潮の長期解析・予測図はJCOPE のweb pageで見られます。親潮関係の図の見方は2017年1月18日号2017年2月1日号で解説しています。

  1. [1]天気の影響を受けやすい海面よりも海流の状態を反映していると考えられます。