親潮は甘い?(親潮ウォッチ2015/8)

タイトルでは、「甘い」と書きましたが、正確には「親潮は塩分が低い」です。

図1はJCOPE2で計算した、北海道・東北沖の、2015年8月1日の水深100メートルでの海流(矢印)と塩分(色)の状態です。北海道から東北まで東岸を北から南へ流れている海流が親潮です。親潮が流れている水は塩分が低い(青っぽい色)であることがわかります。これは、親潮の源流である亜寒帯が低気圧が通りやすい海域で雨が多く、塩分が薄まるからです。また、大陸からの河川水が流れこむことで特に塩分が低くなっているオホーツク海の水が親潮に入っていることも、塩分の低下に寄与しています。

一方、黒潮からの水は塩分が高くなっています(図1の黄色っぽい色)。これは黒潮の源流の亜熱帯は高気圧帯があり、比較的雨が少ないからです。

したがって、中間地点(混合域)では、親潮の温度が低く塩分の低い水と、黒潮の温度が高く塩分の高い水が混じりあっています。

 

図1: JCOPE2による8月1日の水深100メートルでの推測値。矢印は流れ(メートル毎秒)、色は塩分。塩分34は3.4%の塩水に対応します。

 

図2は、図1と同じ8月1日の水深100メートル(※1)での水温(左)と塩分(右)が、平年より高いか、低いか、を見たものです。5月22日号7月3日号の解説で、今年は春から東北沖に黒潮系の時計回り暖水渦が存在していることを述べました。その状態はまだ続いており、親潮第一分枝と第二分枝(図のO1とO2, 7月3日解説参照)に挟まれて、平年より温度の高い(赤っぽい色) 時計回りの渦(A)が存在します(図2左)。これは黒潮系の水なので、塩分で見ると塩分が高い(赤っぽい色)水になっています(図2右A)。一方で、親潮第二分枝からちぎれる形で南に流されている、冷たく塩分の低い(青っぽい色)反時計回りの親潮系の水(B)も存在しています。

 

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図2: JCOPE2による8月1日の水深100メートルでの推測値。矢印は流れ(メートル毎秒)、色は (左)温度の平年(1993年から2012年の平均)との差(ºC)、 (右)塩分の平年(1993年から2012年の平均)との差(塩分単位)。

 

 


 

※1 7月3日号の解説では、海面での図を使いましたが、この解説では、海流の影響がより見やすい水深100メートルの図を使いました。一方、海面での値は天気の影響を受けやすくなっています。

図3は8月7日のの海面水温が、平年より冷たいか、暖かいか、を見たものです。このところ天気が良く暑い日が続いたため、海流の影響による濃淡はあるものの、日本周辺の海面水温は大部分が平年より温度が高く(赤っぽい色)になっています。

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図3: JCOPE2による8月7日の推測値(予測値)。色は海面温度の平年(1993年から2012年の平均)との差(ºC)。


親潮に関する解説一覧はこちらです。
親潮の他の予測図についてはJCOPE のweb pageでご参照下さい。
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