2023年7月31日までの黒潮「短期」予測 (2023年7月12日発表)

高分解能予測JCOPE-T DAの開始にともない、

を行っています。

ここでは 7月31日までのJCOPE-T DAによる短期予測を解説します。短期予測では、黒潮の沿岸への影響がテーマです。

現状と予測

図1・2・3はJCOPE-T DAで計算した2023年7月11日・7月21日・7月31日の黒潮の状態です。水位0.3mの位置に太線を黒潮の流軸の推定値として加えています。

黒潮大蛇行(A)が続いています(長期予測も参照)。大蛇行はS字カーブを描いて北上していましたが、緩和されています(図1) 。S字カーブは再び強化されると予測しています(図2,3) 。関東沿岸から東海沿岸にかけて(B, C) 、黒潮が離れたり近づいたりと、変化が大きそうです。

四国には足摺岬に近づく予測になっています(図1~3, D) 。

夏にむけて全体的に水温が上昇していきます。

図4は7月11日午前9時から7月31日午前9時までの予測のアニメーションです。JCOPE-T DAは潮の満ち引きも計算しているので、1時間毎の図でアニメーションにしています。

Fig1

図1: 2023年7月11日午前9時の予測値。矢印(ベクトル)は海面近くの流れの向き(メートル毎秒, 長いほど速い流れ)、色は海面温度(°C) 。1度毎の等温線も薄く加えた。黒太線は日平均海面水位0.3mの等値線で、黒潮流軸の指標。青丸()が八丈島の位置。クリックすると拡大します。

 

Fig2

図2: 図1に同じ。ただし2023年7月21日午前9時の予測値。

 

 

Fig3

図3: 図1に同じ。ただし2023年7月31日午前9時の予測値。

 


図4: 2023年7月11日午前9時から7月31日午前9時までの1時間毎の予測のアニメーション。黒太線は日平均海面水位0.3mの等値線で、黒潮流軸の指標。クリックして操作してください。全画面表示にしたり、途中で停止したりできます。


今週のハイライト: 黒潮大蛇行と海洋生物地球化学

JAXAひまわりモニタ・海中天気予報のサイト (「JAXAひまわりモニタ・海中天気予報のサイトがリニューアル」)から特徴的な図を毎週紹介します。黒潮親潮ウォッチは1週間に一回の更新ですが、海中天気予報のサイトではほぼ毎日予測が更新されます。

図5は7月4日の人工衛星「ひまわり」観測によるクロロフィルa(プランクトン量の指標)とモデルによる流れの推定値です。黒潮と陸地の間でプランクトンの量が多いことがうかがえます。黒潮の流れの位置が変わればプランクトンの位置も変わります。プランクトンの量が多いのは栄養塩が多くなっていることと関係していると考えられます。このように黒潮の大蛇行は日本南岸の化学物質量・生物量に大きな影響を与えています。

JAMSTECアプリケーションラボの林田研究員を筆頭著者として黒潮大蛇行が日本南岸の化学物質量・生物量にどのような影響を与えるかを調べた論文が出版されました。

詳しくは

黒潮大蛇行の海洋生物地球化学場への影響に関する研究結果を発表

をご覧ください。

Fig5

図5:7月11日午後0時の人工衛星「ひまわり」による観測クロロフィルa(色)とモデルによる流れの推定値(矢印)(①で指定)。色の幅は0.005から10mg/m3に設定した(②で指定)。