見通し(長期予測)
海洋予測モデルJCOPE2Mで、約2か月先までの予測を行っています。図1はJCOPE2Mによる水深100メートル[1]で1月8日の水温(色、℃)と流れ(矢印)です。赤色が黒潮の影響を受けた暖かい水温で、青色が親潮の影響を受けた冷たい水温です。親潮の影響を受けている範囲の指標として、水温5°Cに赤線を引いています。
黒潮続流(A)が例年に比べて異常に北上しており東北沖は水温が高くなっています。また北海道南東方沖には暖水渦(B)が存在します。その合間をぬって、親潮が南下しています。水温5度線(赤線)は平年(青線)より広がっており、平年より水温が高くなっています。気象庁が診断している親潮の面積も平年より小さくなっています。
黒潮続流の北上(A)の南は流れとしてくびれており、渦としてちぎれそうな形をしています(図5、6参照)。しかし、今後の予測(図2~3)は、渦がちぎれそうで、ちぎれずに続くという予測になっています。ちぎれた場合も暖水渦として影響が残りますし、沖合の暖水渦(B)の影響もあるので、親潮域は水温が高い状態が続くでしょう。黒潮続流の北端はやや南下すると予測されています。
日本海では水温が高く、北海道北部で水温5度線の分布が平年よりも広がっており、それが続く予測です(C)。気象庁の対馬暖流の勢力の時系列(日本海における深さ 100m の水温が 10℃以上の領域の面積)も、平年よりかなり高くなっています。
図4は2024年1月8日から3月18日までの予測をアニメーションにしたものです。
図4: 図1に対応する2024年1月8日から3月18日までの予測のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。
今月のハイライト: 1年間で黒潮続流がさらに北上
JAXAひまわりモニタ・海中天気予報のサイト (解説は「JAXAひまわりモニタ・海中天気予報のサイトがリニューアル」) 。このサイトでは上の予測(JCOPE2M, 約9kmメッシュ)よりも高分解能のモデル(JCOPE-T DA, 約3km)の様々な図を見ることができます。モデルの結果と人工衛星「ひまわり」の図を重ねることもできます。
図5と6は、昨年1月12日と今年1月12日の「ひまわり」観測の海面水温とモデルによる流れの推定値です。
昨年1月の段階でも黒潮続流が宮城県付近まで北上する異例の状態でしたが、今では岩手県沖まで北上しています。
次からの節では3つのアニメーションで2023年の親潮を振り返ります。
2023年の親潮 (1) 水深100mの水温と流れ
図7は、図4に対応する昨年2023年の1月1日から12月31日までのアニメーションです。
図7: 図4に対応する2023年1月1日から12月31日までのJCOPE2Mによる推定値のアニメーション。
2020年の親潮 (2) 海面の流れとその水温
図8では、温度の高い水を暖色、温度の低い水を寒色で表現しています。また、流速の強いところは目立たせ、流速の弱いところは透明にして目立たなくしています。
図8: 2023年1月1日から2023年12月31日までの黒潮のアニメーション。海面温度を暖色・寒色、流れの強さを透明度で表現。[2] 。JCOPE2の再解析値から作成。クリックして操作して下さい。途中で停止することもできます
2020年の親潮 (3) 海面と水深100mでの水温と流れ
図9は高解像度モデルJCOPE-DAによる昨年2022年の1月1日から12月31日のアニメーションです。海面と水深100mの図をアニメーションにしています。
図9: 2023年1月1日から12月31日のJCOPE-T DAによるアニメーション(1日平均)。左が海面、右が水深100m。矢印(ベクトル)が海面の流れの向きと強さ(メートル毎秒)。色が海面水温(℃)。温度の等温線も2℃ごとに白色で加えてある。水深100mの右の図には親潮の勢力の指標として水温5℃の等温線も黒太線で加えている。クリックして操作してください。全画面表示にしたり、途中で停止したりできます。
黒潮親潮ウォッチでは、親潮の現状について月に一回程度お知らせします。親潮に関する解説一覧はこちらです。 JCOPE-T-DAによる短期予測はJAXAのサイトで見ることができます。 4日毎に更新されるJCOPE2Mによる親潮の長期解析・予測図はJCOPE のweb pageで見られます。親潮関係の図の見方は2017年1月18日号と2017年2月1日号で解説しています。
- [1]天気の影響を受けやすい海面よりも海流の状態を反映していると考えられます。↩
- [2]流速と温度に対する色の対応は参考図の通り。海洋研究開発機構の松岡大祐氏の手法を応用しました。
参考図