最近の海洋熱波・寒波(2024/3) 2023年は最高水温

最近の水温の状況

最近の日本周辺の海面の水温の状況を見てみます。

図1は、先月2月21日と今月3月20日の海面の水温の平年との差を見たものです[1] 。平年より高い場所が赤っぽい色、低い場所では青っぽい色になっています。図2は、同じく水深100mの図です。水深100mでも海面と同じ変化が見られれば、水温の平年との差が天気だけでなく海流の影響を受けている可能性が高くなります。

引き続き、日本周辺の海面で多くの海域が平年より高い水温になっています。

特に黒潮続流が極端に北上している南東北太平洋沖は平年よりかなり高い水温になっています(黒潮続流は南下するか?(親潮ウォッチ2024/3)参照)。沖合の暖水渦でも平年よりかなり高い水温です。現在、極端な黒潮続流の北上が渦でちぎれた形になっており、今後が注目されます(今週の黒潮「短期予測」参照)。

日本海でも高い水温が続いています。

3月22日に公表された気象庁「気候変動監視レポート2023」によれば、。2023年の日本近海の年平均海面水温の平年差は、統計を開始した1908年以降、最も高い値です。特に平年差が+1.6℃と最も大きくなった 9月は、北海道南東方海域・本州東方海域で平年差+4℃、日本海でも平年差+3℃の海域がみられました。

水温が平年より低い例外としては黒潮大蛇行による冷水渦のある紀伊半島南の海域があります。

今後の日本周辺の水温については、「季節ウォッチ」も参考にしてください。

Fig1

図1: 海面の温度の平年との差(℃)。[上段]2024年2月21日。 [下段] 2024年3月20日。

Fig2

図2: 図1に同じ、ただし水深100m。

 

海洋熱波・海洋寒波

海洋熱波とは、数日以上極端に海水温が上昇する現象です。その発生頻度は近年に大幅に増加しており、海洋生態系に与える影響が危惧されています([プレスリリース] 北海道・東北沖で海洋熱波が頻発していることが明らかに)。

図3は、海洋熱波でよく用いられている基準[2]を使って日本周辺の海面での海洋熱波・寒波の発生状況を見たものです。同じく、図4は水深100mでの海洋熱波・寒波の発生状況です。

数字が1以上になっている所が統計的に10%以下しか発生しない高い温度である海洋熱波が発生している所です。数字が大きいほど強い海洋熱波であることをしめしています。図1,2(b)が平年よりどれだけ水温が高いのかを温度差でしめしているのに対し、図3,4はその中でもまれな温度変化をしめしています。

海面(図3)でも水深100m(図4)でも、目立つ海洋熱波は東北沖太平洋沖、日本海、東海沿岸です。特に黒潮続流の影響を受けている東北沖太平洋沖はレベル3「厳しい」以上の海洋熱波が見られます。日本海でもレベル3以上の海洋熱波が見られます。

日本黒潮大蛇行の冷水渦では、水深100mでレベル4(極端)の海洋寒波になっています。

Fig3

図3: 2024年3月20日における日本周辺水深1mの海洋熱波と海洋寒波の発生状況。

 

Fig4

図4: 図3に同じ、ただし水深100m。

 

アニメーション

図5は2024年2月21日から2024年3月20日までの水温、平年からの差、海洋熱波指数のアニメーションです。

図5: JCOPE2Mによる2024年2月21日から2024年3月20日までの水温、平年からの差、海洋熱波指数。左が水温(等値線, ℃)、温度の平年との差(色, ℃)。平年は1993-2020年平均。右が海洋熱波指数。上段が水深1m。下段が水深100m。クリックして操作してください。途中で停止もできます。

 

  1. [1]この記事では、今年の値はJCOPE2Mを使っています。平年の値はJCOPE2M再解析の1993~2020年の平均を使っています。JCOPE2M再解析データは学術研究利用では無償で公開しています。
  2. [2]JCOPE2Mの1993~2020年のデータを使い、統計的に10%以下(90パーセンタイル)の高温が5日以上続いた場合に海洋熱波としています。平年との差が海洋熱波の基準(90%タイルと気候平均の差)の2倍以上である場合は2,3倍以上である場合は3とカテゴリー化しています。逆に統計的に10%以下(10パーセンタイル)の低温が5日以上続いた場合には海洋寒波としています。