高分解能予測JCOPE-T DAの開始にともない、
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- JCOPE-T DAによる短期予測(20日先)
- JCOPE2Mによる長期予測(2か月先)
を行っています。
ここでは6月10日までのJCOPE-T DAによる短期予測を解説します。短期予測では、黒潮の沿岸への影響がテーマです。
現状と予測
図1・2・3はJCOPE-T DAで計算した5月21日・5月31日・6月10日の黒潮の状態です。
黒潮大蛇行(A)が続いています(図1, 長期予測も参照)。
A→B→Cという大蛇行からの北上流のS字カーブが大きくなると予測しています(図1~3) 。東海から関東にかけて黒潮が沿岸に近づき(B-C) 、四国・足摺岬でも黒潮が近くを流れそうです(D-E) (図1~3) 。
夏に向けて全体的に水温が上がっていきます。
図4は5月21日午前9時から6月10日午前9時までの予測のアニメーションです。JCOPE-T DAは潮の満ち引きも計算しているので、1時間毎の図でアニメーションにしています。

図1: 2024年5月21日午前9時の予測値。矢印(ベクトル)は海面近くの流れの向き(メートル毎秒, 長いほど速い流れ)、色は海面温度(°C) 。1度毎の等温線も薄く加えた。青丸(●)が八丈島の位置。クリックすると拡大します。
図4: 2024年5月21日午前9時から6月10日午前9時までの1時間毎の予測のアニメーション。クリックして操作してください。全画面表示にしたり、途中で停止したりできます。
今週のハイライト: 川からの流出
JAXAひまわりモニタ・海中天気予報のサイト (「JAXAひまわりモニタ・海中天気予報のサイトがリニューアル」)から特徴的な図を毎週紹介します。黒潮親潮ウォッチは1週間に一回の更新ですが、海中天気予報のサイトではほぼ毎日予測が更新されます。
図5の(a)(b)は5月20日と5月21日の静岡県付近の塩分分布のモデルによる推定値です。この地方には5月20日に雨が降り、それが川から淡水として流出したため、天竜川や駿河湾西部の川の流入により、低塩分の領域が広がっています(図(b)の矢印で指し示した所)。JCOPE-Tは、JAXAが東京大学と共同で開発している陸面水文量シミュレーションシステムToday’s Earthの河川流出量を計算に取り入れています。
図5の(c)(d)は5月20日と5月21日の人口衛星「ひまわり」で観測されたクロロフィルa(プランクトン量の指標)の分布です。川から栄養塩を多く含んだ水が多く流れ込んでいるためにクロロフィルaも塩分と同じように広がっています。

図5:(a)2024年5月20日午前9時のモデルによる海面塩分。塩分の範囲は32-35PSU。(b)同じく5月21日午後9時。(c)人工衛星「ひまわり」観測による5月20日1日平均クロロフィルa濃度。範囲は0.01-100mg/m3。(d)同じく5月21日。
JCOPE2Mは4日毎に更新を行っています(解説参照)。JCOPE2Mの他の予測図についてはJCOPE のweb pageでご参照ください。図の見方は連載: JCOPE2解析・予測画像の見方で解説しています。