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- JCOPE-T DAによる短期予測(20日先)
- JCOPE3Mによる長期予測(2か月先)
を行っています。
ここでは8月12日までのJCOPE-T DAによる短期予測を解説します。短期予測では、黒潮の沿岸への影響がテーマです。
現状と予測
図1・2・3はJCOPE-T DAで計算した7月22日・8月2日・8月22日の黒潮の状態です。
伊豆諸島付近で蛇行が発達しているのと同時に(図1A)、黒潮からちぎれていた渦が九州される形で九州東にも蛇行ができています(図1 A”)。
伊豆諸島付近の蛇行(A)は蛇行こそ大きいものの、潮岬で接岸していたり(図5も参照)、八丈島(●)の南に黒潮があったりと、いわゆる黒潮大蛇行とは言えない形です(長期予測の記事参照)。この蛇行は次第に縮小すると予測されています(図2~3)。
黒潮大蛇行の時は、黒潮からの分岐流により、関東から東海沿岸の水温が高くなり、沿岸地域に蒸し暑い夏や豪雨をもたらすという研究があります[1]。黒潮大蛇行ではないものの、まだ暖水の分岐流は続いているようですが(B)、予測では分岐流が弱まり、蛇行して黒潮が離れているところでは水温が下がりそうです(図2~3)。
長期予測ではA”の蛇行が東に移動すると予測されていますが、短期予測ではあまり移動しないという違いが出ています。
夏に向かって、全体的に水温の高い状態が続きます。台風の影響など天候しだいで急激に水温が下がる場合もあります(図2)。
図4は7月22日午前9時から8月12日午前9時までの予測のアニメーションです。JCOPE-T DAは潮の満ち引きも計算しているので、1時間毎の図でアニメーションにしています。

図1: 2025年7月22日午前9時の予測値。矢印(ベクトル)は海面近くの流れの向き(メートル毎秒, 長いほど速い流れ)、色は海面温度(°C) 。1度毎の等温線も薄く加えた。青丸(●)が八丈島の位置。クリックすると拡大します。
図4: 2025年7月22日午前9時から8月12日午前9時までの1時間毎の予測のアニメーション。クリックして操作してください。全画面表示にしたり、途中で停止したりできます。
今週のハイライト:2つの蛇行
図5はJAXAひまわりモニタ・海中天気予報のサイトで見た、人工衛星「ひまわり」で観測された7月22日の海面水温とです。
現在黒潮には、伊豆諸島付近と、九州・四国付近の2つの蛇行があります。伊豆諸島付近の蛇行の真ん中にある八丈島付近では水温が下がっています。
2つの蛇行の間の紀伊半島・潮岬で黒潮が接岸しています。そこから西の四国へと暖水が分岐している様子がうかがえます(点線矢印)。今後、この接岸がどうなっていくかが、「長期」予測のモデルと「短期」予測のモデルとで見解が分かれており、予測の注目点となります。
- [1]東海地方に豪雨と猛暑をもたらしたのは「黒潮の大蛇行」の影響と解明 ~黒潮が及ぼす影響を高解像度の気候シミュレーションで分析~(2024/12/23東北大学プレスリリース)↩
JCOPE2Mは4日毎に更新を行っています(解説参照)。JCOPE2Mの他の予測図についてはJCOPE のweb pageでご参照ください。図の見方は連載: JCOPE2解析・予測画像の見方で解説しています。