暖水渦の影響が続く (親潮ウォッチ2022/10)

海洋予測モデルJCOPE2Mで、約2か月先までの予測を行っています。図1はJCOPE2Mによる水深100メートル[1]で10月5日の水温(色、℃)と流れ(矢印)です。赤色が黒潮の影響を受けた暖かい水温で、青色が親潮の影響を受けた冷たい水温です。親潮の影響を受けている範囲の指標として、水温5°Cに赤線を引いています。

暖水渦(A)が北海道の南東にあり、親潮が南下しにくい状況になっています。そのために例年より暖水が広がっています。近年は夏にこのような状況になることが多いです(「北海道・東北沖で海洋熱波が頻発していることが明らかに」参照)。気象庁の診断でも現時点で親潮の影響面積は例年に比べてかなり小さく、2020年・2021年に比べても親潮の影響が弱くなっています。

図2、3は11月14日、12月14日の予測です。北海道の南東の暖水渦は継続すると予測しています。黒潮続流も北寄りで、暖水渦を活発に作ると予測されています[2]

日本海では北海道西部で暖水が平年以上に広がっており、それが続くと予測しています。

図4は2022年10月4日から12月14日までの予測をアニメーションにしたものです。

Fig1

図1: JCOPE2Mによる2022年10月5日の水深100メートルでの水温(色、℃)と流れ(矢印)。赤色が5°Cより高い黒潮の影響を受けた暖かい水温で、青色が5°Cより低い親潮の影響を受けた冷たい水温。親潮の影響を受けている範囲の指標として水温5°Cに太い赤線を引いた。青線は1993-2020年平均の水温5°C線で平年の親潮の影響範囲。

 

Fig2

図2: 図1に同じ。ただし11月14日の予測。

 

Fig3

図3: 図1に同じ。ただし12月14日の予測。

 


図4: 図1に対応する2022年10月5日から12月14日までの予測のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。

今月のハイライト: 人工衛星「ひまわり」観測の水温と流れ

JAXAひまわりモニタ・海中天気予報のサイト がリニューアル公開されました(「JAXAひまわりモニタ・海中天気予報のサイトがリニューアル」)。このサイトでは上の予測(JCOPE2M, 約9kmメッシュ)よりも高分解能のモデル(JCOPE-T DA, 約3km)の様々な図を見ることができます。モデルの結果と人工衛星「ひまわり」の図を重ねることもできます。

図5は、10月8日の人工衛星「ひまわり」観測の海面水温(1日平均)とモデル推定による海面の流れを重ねた図です。海面水温が時計回りの暖水渦(A)、親潮(B)、津軽暖流(C)、津軽暖流にともなう時計回りの暖水渦(D)、宗谷暖流などに影響を受けていることがわかります。

Fig5

図5: モデルによる流れ推定値(矢印)と人工衛星「ひまわり」観測の海面水温(1日平均, 色)の図(①で指定)。水温の範囲は-2℃から31℃(②で指定)。

  1. [1]天気の影響を受けやすい海面よりも海流の状態を反映していると考えられます。
  2. [2]AVISO+のデータでは黒潮続流が現在は不安定であると診断されています。

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黒潮親潮ウォッチでは、親潮の現状について月に一回程度お知らせします。親潮に関する解説一覧はこちらです。 JCOPE-T-DAによる短期予測はJAXAのサイトで見ることができます。 4日毎に更新されるJCOPE2Mによる親潮の長期解析・予測図はJCOPE のweb pageで見られます。親潮関係の図の見方は2017年1月18日号2017年2月1日号で解説しています。