航海も残りあとわずか
地球深部探査船「ちきゅう」の航海も残りあとわずかですが、難しい作業は残っています。コアの取得を終え、その後、孔内観測センサーの降下、観測孔井の構築作業が行われます。海流の影響に最も注意を払う作業です。
「ちきゅう」公式Twitterより
Last day of coring. コアリング最終日です。#JAMSTEC #Chikyu #IODP pic.twitter.com/LAzvYlaQdT
— CHIKYU 地球深部探査船「ちきゅう」 (@Chikyu_JAMSTEC) 2016年11月3日
その「ちきゅう」と支援船から10月31日までの観測データが届いたので、今回はそれについて見てみましょう。
図1の赤記号は、前回の10月24日午前9時から、10月31日午前9時までの「ちきゅう」の位置です。掘削地点で連日コアの採取を続けていました。
今回の観測には支援船2隻も参加しています。支援船は、「ちきゅう」に物資を補給したり、「ちきゅう」の上流から強い海流が来ないかを警戒したりすることで、「ちきゅう」の観測を助けます。今回、支援船1(新潮丸、緑線)と支援船2(第八明治丸、青線)は、交替で和歌山に寄港しながら、任務を行っています。流速も観測していますが、今号では解説を省略します。
「ちきゅう」の観測については「ちきゅう」公式Twitterや「ちきゅう」船上レポートをご参照ください。
「ちきゅう」が観測した流速
「ちきゅう」が観測した海面下の流速(黒線、313mでの流速)を見ると、前回までじわじわ上昇してきた海面下の流速は、1ノット前後を保っています。一方で、海面での流速(赤線、15m)は、振動しながら、平均としては低下していました。連載第5回で予測していた、海面(赤線)での流速は変動が大きいが海面下の流速よりも弱いという状況になったようです。
今後の見通し
掘削地点周辺の海流予測は、「ちきゅう」のための海流予測特設サイトで毎日更新し、公開しています。JCOPE-T-JCWとJCOPE-T-EASという二つの予測モデルを使っています。予測モデルについては、連載第6回と第7回で解説しました。
その中から、JCOPE-T-JCWの、11月5日12時における海面での流速分布の予測値を見ると(図3上)、黒潮は室戸岬沖でやや離岸して南に下がっていますが、依然として掘削地点の北に位置して、掘削地点(★)からは遠くなっています。ただ、やや強い流れである時計回りの循環の影響をうけて、掘削地点の流速は少し上昇しそうです。そのため、掘削地点での流速の予測時系列(図4)を見ると、JCOPE-T-JCWでもJCOPE-T-EASでも、海面の流速が若干上昇するという予測になっています。それでも、流速はせいぜい1ノット強にとどまると予測しています。
11月9日(図3下)になると、時計回りの循環の影響は弱くなり、黒潮も室戸岬に接岸して北上し、掘削地点での流速は弱くなるという予測になっています。
海面下の流速(例えば313m、図4の水色線)は、1ノット前後の流速が続くと予測しています。
このまま、海流の影響を大きく受けずに、航海を無事終えて欲しいものです。
「ちきゅう」のための海流予測の連載記事一覧はこちら。
この連載では、流れの速さの単位として船舶でよく使われるノット(2ノットは約1メートル毎秒)を使用します。
「ちきゅう」のための海流予測特別サイトはhttps://www.jamstec.go.jp/jcope/vwp/chikyu.2016.09/です。
「ちきゅう」の観測の様子に関しては「ちきゅう」公式twitterや船上レポートを参照。