2017年1月19日から2月16日の予測を検証します

毎月の月末は、過去1カ月の予測を検証する予定です。今回は2017年1月25日号の、1月19日から2月16日までの予測を検証します。

1月25日号の予測のポイントの一つは、黒潮が八丈島の南を流れる離岸流路がいったん続くことでした。その予測は当たりました[1]

その後、離岸流路は一時的で、八丈島の北を流れる接岸流路に戻ると予測していました。図1上段は、1月19日から予測した2月16日の黒潮の状態です。先月の予測では2月16日には既に接岸流路になると予測していた(図1上段)のに対し、現実にはまだ離岸流路が続いています(図1下段)。ただし、今週号の予測でも、いったん接岸流路になるという予測は継続しています。

1月25日号では、房総半島への黒潮の接岸はしばらく続くと予測しており(接岸傾向k)、その点では予測は悪くはありませんでした。しかし、予測(図1上段)では房総半島から遠ざかりつつあるのに対し(離岸傾向l)、現実(図1下段)は黒潮の流路のカーブが大きく、東からまわりこむようにして房総半島に近づいています。

2月16日には九州の南で大きく南へ離岸しており(図1下段、離岸傾向r)、今週号の予測では小蛇行が発達すると予測しています。この大きな離岸は、先月の予測ではやや見えている程度でした(図1上段)。

Fig1

図1: [上段]2017年1月19日から予測した2月16日の予測値。[下段]観測値を取り入れて推測した2017年2月16日の解析値。矢印は海面近くの流れ(メートル毎秒)、色は海面高度(メートル)。赤は八丈島の位置。アルファベットj,k..は接岸・離岸傾向の波(今週号の現状・予測参照)。

 

2017年2月16日頃の実際の様子については、図2の「ひまわり8号」による海面水温[2]も参照してください。八丈島の周りの温度はまだ低く、黒潮が離岸流路にあることをしめしています。接岸傾向mからは沿岸へ暖水が入り込んでいる様子が見られます(赤矢印)。九州南ではやや冷たい水が南まで伸びています(離岸傾向r)。

Fig2

図2: 「ひまわり8号」が観測した2017年2月16日の一日平均海面水温(°C)。JAXA提供の1時間データを合成した。白の空白は雲がかかって観測できなかった所。赤星()は八丈島の位置。アルファベットj,k,,は図1下段の接岸・離岸傾向の波に対応。

 

図3は2017年1月19日から2月16日までの予測値(上段)と実際(下段)の比較をアニメーションにしたものです。


図3:
2017年1月19日から2月16日までの予測(上段)と実際(下段)の比較のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。

kurokatsu


八丈島付近の黒潮流路について、詳しく見てみましょう。過去の解説で[3]、伊豆諸島付近の黒潮流路を判断するには、八丈島での海面高度(潮位)を見れば良いことを説明しました。流れの強い黒潮をはさんで、本州に近い方は海面高度が低い、逆の沖側では海面高度が高いという関係があるからです(図1参照)。このため、黒潮が本州に近づいて島の北を流れる接岸流路であれば、島周辺の海面高度は高くなります。逆に、黒潮が島の南を流れる離岸流路が発達すれば、島周辺の海面高度は低くなります。

図4は、JCOPE2Mで観測値を取り入れて再現した八丈島の海面高度(★による点線)と、その予測(青線、赤線)です。実際の海面高度の変化(★による点線)を1月25日号の予測を比較すると、1月終わりにかけて離岸流路が発達する(海面高度が低下する)ことは良く予測できていました。

その後、接岸流路になる(海面高度が上昇)と予測していましたが(青線)、実際には離岸流路(海面高度が下降)が続きました(★による点線)。時期はずれましたが、いったん接岸流路(海面高度が上昇)に向かうという予測は今週号でも変わっていません(赤線)。

今週号の予測(赤線)では、いったん接岸流路(海面高度が上昇)になった後は、再び離岸流路(海面高度が下降)になると予測しています。

Fig4

図4: JCOPE2Mによる八丈島周辺の海面高度の予測の2016年12月1日からの時系列。青線が2017年1月19日からの予測。赤線が2017年2月16日からの予測。★による点線が観測値を取り入れて推測した現実に近いと考えられる値。

 

  1. [1]海上保安庁は2月5日頃に八丈島の南側を流れる流路となったと判断しています(「本州南方の黒潮流路について」2017/2/6)。
  2. [2]ひまわり8号」の海面水温については、2015/10/9号・気象衛星「ひまわり8号」で見た黒潮を参照。JAXA提供の「ひまわり8号」海面水温データは、2016年8月31日からバージョン1.2にバージョンアップしています。過去の「ひまわり8号」の水温データを使った解説一覧はこちら。
  3. [3]過去の八丈島水位の解説一覧はこちら