2017年2月16日から3月24日の予測を検証します

毎月の月末は、過去1カ月の予測を検証する予定です。今回は2017年2月22日号の、2月16日から3月24日までの予測を検証します。

2月22日号の予測のポイントの一つは、2月16日の時点では黒潮が八丈島の南を流れる離岸流路だった黒潮が、いったん八丈島の北を流れる接岸流路的な状態になった後(後述)、再び離岸流路になるということでした。その予測は当たりました。図1上段は、2月16日から予測した3月24日の黒潮の状態です。先月の予測では3月24日には離岸流路になると予測していたとおり、現実に離岸流路になっています(図1下段)。

2月22日号の予測のもう一つのポイントは、九州東に大きめの離岸(小蛇行)が発生するということでした(図1上段)。実際にも小蛇行が発生しています(図1下段)。ただし、予測の小蛇行(図1上段)は下流への移動が現実(図1下段)よりも早過ぎました。JCOPE2Mは、小蛇行の下流への移動の予測がやや早過ぎる傾向があるかもしれません。今後の検証の注目点です。

Fig1

図1: [上段]2017年2月16日から予測した3月24日の予測値。[下段]観測値を取り入れて推測した2017年3月24日の解析値。矢印は海面近くの流れ(メートル毎秒)、色は海面高度(メートル)。赤は八丈島の位置。アルファベットj,k..は接岸・離岸傾向の波(今週号の現状・予測参照)。

 

2017年3月24日頃の実際の様子については、図2の「ひまわり8号」による海面水温[1]も参照してください。八丈島の周りの水温は低く、黒潮が離岸流路にあることをしめしています。九州南東では小蛇行による大きな離岸のために、その岸側で冷たい水温が見られています。

Fig2

図2: 「ひまわり8号」が観測した2017年3月24日の一日平均海面水温(°C)。JAXA提供の1時間データを合成した。白の空白は雲がかかって観測できなかった所。赤星()は八丈島の位置。

 

図3は2017年2月16日から3月24日までの予測値(上段)と実際(下段)の比較をアニメーションにしたものです。


図3:
2017年2月16日から3月24日までの予測(上段)と実際(下段)の比較のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。

kurokatsu


八丈島付近の黒潮流路について、詳しく見てみましょう。過去の解説で[2]、伊豆諸島付近の黒潮流路を判断するには、八丈島での海面高度(潮位)を見れば良いことを説明しました。流れの強い黒潮をはさんで、本州に近い方は海面高度が低い、逆の沖側では海面高度が高いという関係があるからです(図1参照)。このため、黒潮が本州に近づいて島の北を流れる接岸流路であれば、島周辺の海面高度は高くなります。逆に、黒潮が島の南を流れる離岸流路が発達すれば、島周辺の海面高度は低くなります。

図4は、JCOPE2Mで観測値を取り入れて再現した八丈島の海面高度(★による点線)と、その予測(青線、赤線)です。実際の海面高度の変化(★による点線)を2月22日号の2月16日からの予測(青線)と比較すると、2月終わりにかけて一時的に接岸流路的な状況(海面高度が上昇)になった後、3月に再び離岸流路に戻る(海面高度が下降)ことを良く予測できていました。

今週号の予測(赤線)では、離岸流路がしばらく続く(海面高度の低い値が続く)と予測しています。

Fig4

図4: JCOPE2Mによる八丈島周辺の海面高度の予測の2017年1月1日からの時系列。青線が2017年2月16日からの予測。赤線が2017年3月24日からの予測。★による点線が観測値を取り入れて推測した現実に近いと考えられる値。

 

  1. [1]ひまわり8号」の海面水温については、2015/10/9号・気象衛星「ひまわり8号」で見た黒潮を参照。JAXA提供の「ひまわり8号」海面水温データは、2016年8月31日からバージョン1.2にバージョンアップしています。鹿児島県水産技術開発センター和歌山水産試験場からも「ひまわり」の画像が公開されています。過去の「ひまわり8号」の水温データを使った解説一覧はこちら。
  2. [2]過去の八丈島水位の解説一覧はこちら