2013年の黒潮「大蛇行」?

2004年7月~2005年8月の発生した後、黒潮が大蛇行は発生していないとされています。そのような状況の中、2013年には大蛇行が発生か?という時期がありました。この2013年の黒潮を振り返ります。

一回目の蛇行の発達

図1は、2013年1月1日と5月26日の黒潮の様子を、過去の海況をよく再現するデータであるJCOPE2再解析を使用して見たものです。この年は、1月頃に九州の東にあった小蛇行(小蛇行1、図1上段)が黒潮下流(東)に移動し、4月末から5月にかけて1回目の比較的大きな蛇行に発達しました(図1下段)。この蛇行は伊豆諸島を越えて(が八丈島の位置)、あっさり東に移動したため、あまり話題になることはありませんでした。

ただし、次の蛇行の蛇行の種となる小蛇行(小蛇行2、図1下段)が、既に九州の東に存在していました。

Fig1

図1: 観測値を取り入れて作成した2013年1月1日と5月26日の黒潮の様子(データはJCOPE2再解析)。矢印は海面近くの流れ(メートル毎秒)、色は海面高度(メートル)。赤丸()が八丈島の位置。

 

2回目の蛇行の発達

図1は、2013年7月28日と8月20日の黒潮の様子です。一回目の蛇行は東に去りましたが、小蛇行2が東に移動してきて、8月には2回目の大きな蛇行に発達しました。この時の蛇行は伊豆諸島の西にしばらくとどまるとの予測があり、2004-2005年に発生して以来の久しぶりの黒潮大蛇行になるのではないか?と大きな話題になりました。2013年8月の蛇行に関しては気象庁が臨時の発表を2回行っています[1]。東海でのシラスなどの不漁[2]が、この時の蛇行と関係あるのではないかとされたことも大きな話題になった理由です。

Fig2

図2: 2013年7月28日と8月20日の黒潮の様子。

蛇行のその後

もしかしたら典型的な黒潮大蛇行になるかと思われた2013年8月の蛇行ですが、9月(図3上段)には東に移動し、八丈島(図の)の南を黒潮を流れるようになったので[3]、この年が黒潮大蛇行の年として記録に残ることはありませんでした[4]。しかし、比較的大きな蛇行は、翌年2014年の2月頃に衰え始めるまで数ヶ月続き[5]、2013年は興味深い年だったと言えます。2014年3月に黒潮は八丈島の北を流れる接岸流路に変化しました[6]。図4は2013年1月1日から2014年3月31日までの黒潮の様子をアニメーションにしたものです。

今年2017年は、いったん大きい黒潮の蛇行が発達した後も、さらに次の小蛇行が控えているという点で、2013年に似ている状況と言えるかもしれません。一方で、今年の小蛇行2は、2013年の小蛇行2よりも大きく発達している様子を見せているので(今週の予測参照)、2013年とは別の道を進むかもしれません。今後の動きに注目です。

図3: 2013年9月1日と2014年2月1日の黒潮の様子。

 

図4:2013年1月1日から2014年3月31日までの黒潮の様子のアニメーション。

  1. [1]臨時診断表 東海沖の黒潮流路の南下について」(2013年8月6日発表)。
    臨時診断表 東海沖の黒潮流路の南下について(続報)」(2013年8月29日発表)。
  2. [2]参照:「2013年田子の浦漁港しらす祭り中止のお知らせ」(2013/8/20 田子の浦漁業組合)。
  3. [3]遠州灘沖の黒潮蛇行について(続報)」海上保安庁 2013/09/02。
  4. [4]黒潮の数か月から十年規模の変動(流路)」気象庁。
  5. [5]黒潮が大きく蛇行している時に東京に降りやすいという研究があります(2015/2/20号「黒潮の位置は天気にも影響を与えるの?」参照)。2014年2月8日から9日,そして2月14日から16日にかけて,関東甲信地方を中心に大雪となりましたが、2013年から続いた黒潮の比較的大きな蛇行が大雪にどれだけ影響していたかと考えてみるのも面白いでしょう。
  6. [6]本州南方の黒潮流路について」海上保安庁 2014/3/17。