最近の親潮の様子を見ています。暖水渦の影響で親潮の勢力はやや弱い状態です。 |
全体的な状況
まず、日本周辺の水温状況を見てみましょう。図1は、2018年3月6日と、4月6日の、海面水温の平年との差を見たものです[1]。平年より高い場所が赤っぽい色、低い場所では青っぽい色になっています。
親潮周辺海域では、平年より高い海域が見られます(図1下段A)。次の節以降で詳しく見ています。
黒潮大蛇行が現在発生しており(黒潮予測記事参照)、それにともなう冷水渦(B)で冷たくなっています。その北では東から西へ沿岸沿いに黒潮から暖水が流入しているため、関東から東海沿岸にかけて海面水温が平年よりなっています(C)。
日本海では平年より冷たい海域がみられますが(D)、3月(図上段)よりも4月(図下段)は狭くなっています。
親潮の様子(海面)
親潮周辺の様子を詳しく見てみます。図2左は、図1下段を親潮域で拡大した図です。図2左のa~eの海域などでは平年より高くなっています。水温が高いのは海流(暖水渦)の影響だと考えられます。図2右は、対応する海面温度そのもの(色)と、流れ(矢印)です。a~eの位置に時計回りの暖水渦が見られます。
親潮の様子(海面下)
海流の様子をより良くみるために、天気の影響を受けにくい海面下の水深100メートルの様子を見てみましょう(図3左図)。昨年の状況とも比べます(図3右)。渦a,bの影響で、やや親潮が南下しにくくなっています(図3左)。渦c,d,eは強く、渦の場所では昨年(図3右図)よりも今年のほうが水温が高くなっています(図3左図)。
4月6日からの予測
図4は、JCOPE2Mで4月6日から予測した4月25日の親潮域の水深100mの水温(左図)と、平年の水温([2]、右図)を比較しています。水温5度の等値線が親潮の勢力の指標になっています。平年の親潮第一分枝(①)と第二分枝(②)と比べて(右図)、第一分枝は南下しやすい一方、第二分枝が南下しにくい予測になっています[3](左図)。
図5は、図4に対応する4月6日から6月7日までの予測をアニメーションにしたものです。渦の動きの予測は難しいので、今後予測が変わる可能性があります。最新の予測は週2回更新されるJCOPE のサイトでチェックしてください。
図5: 親潮域の水深100mでの2018年4月6日から6月7日までの水温のJCOPE2Mによる水温(色、℃)と流れ(流線)の予測(左図)と、平年の水温(右図)の比較のアニメーション。親潮勢力の指標として水温5度に赤細線で等値線。青枠は図6の計算に使用。クリックして操作してください。途中で停止もできます。
親潮面積
JCOPE2Mによる推定によれば(図6青太線)、親潮の勢力の指標である親潮面積(図3の青枠での水深100メートルの水温5度以下の水の広がり)[4]は、暖水渦のため平年(黒細線)より小さな値が続いてきました。 予測(黄点線)では、上で述べたように、第一分枝が南下しやすい一方、第二分枝が南下しにくい予測になっているので、合計では平年並みの値になりそうです。
- [1]この記事では、今年の値はJCOPE2Mを使っています。平年の値は親潮ウォッチ2018/1まではJCOPE2再解析の1993~2012年の平均を使っていましたが、今号からJCOPE2M再解析の1993~2016の平均を使っています。↩
- [2]1993から2016年の平均。↩
- [3]親潮第一分枝・第二分枝については「親潮はどんな流路になっているの?(親潮ウォッチ2015/7)」の解説参照。↩
- [4]親潮面積については、「親潮が記録的なあたたかさ(親潮ウォッチ2015/9)」で解説しています。↩
黒潮親潮ウォッチでは、親潮の現状について月に一回程度お知らせします。親潮に関する解説一覧はこちらです。 JCOPE-T-DAによる短期予測はJAXAのサイトで見ることができます。 4日毎に更新されるJCOPE2Mによる親潮の長期解析・予測図はJCOPE のweb pageで見られます。親潮関係の図の見方は2017年1月18日号と2017年2月1日号で解説しています。