2019年1月の予測を検証します

毎月、過去1カ月の予測を検証しています[1]

予測と実際(長期予測)

今回は12月28日号の、昨年12月24日から予測した今年1月25日までの結果を検証します。12月28日号では黒潮大蛇行が続くと予測しました。その予測は当たっています。

図1上段は、昨年12月24日から予測した今年1月25日の黒潮の状態です。図1下段は、観測値を取り入れて実際に近いと考えられる1月25日の状態です。図2は、同じく予測値(上段)と実際(下段)の比較を、12月24日から1月25日までのアニメーションにしたものです。

1月25日の予測(図1上段)は、実際(図1下段)の黒潮大蛇行の特徴である、潮岬が継続して離岸していること、黒潮の最南下点が北緯 32 度より南に位置することを予測できていました。伊豆諸島付近では八丈島の北を流れる流路が続くと予測しており、それも当たっていました。黒潮大蛇行を作る反時計回りの冷水渦の変形も予測できていました。

四国・室戸岬で離岸が続くと予測していました[2]。これもその通りでした。

12月28日号の予測では、九州の東にも大きめの離岸(小蛇行)が発達すると予測していました(図1上)。実際に小蛇行のきざしがありますが(図1下)、予測は東への進行が早すぎました。その影響で足摺岬の離岸を大きく予測しすぎています。

Fig1

図1: [上段]12月24日から予測した1月25日の予測値。[下段]観測値を取り入れて推測した1月25日の解析値。矢印は海面近くの流れ(メートル毎秒)、色は海面高度(メートル)。赤は八丈島の位置。

 


図2: 12月24日から1月25日までの予測(上段)と実際(下段)の比較のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。

黒潮大蛇行を作る渦の強さ(長期予測)

大蛇行を作る渦の強さを数値化するために、2018/3/14号「深海から黒潮大蛇行のこれからを予測する」で、深層の冷水面積(水深1000mの水温3℃以下の海域の面積)を渦の強さの指標として導入しました。

図3の点線は、12月28日号による冷水面積の変化です。上昇の後の横ばいを予測していました。実際(黒線)にも上昇して、予測より高い値で横ばいになりました。渦の強さが保たれていることで、黒潮大蛇行が長引きそうな状態です。

黒潮大蛇行が2017年8月末に始まってから1年5月たっており、前回2004-2005年(約1年2か月)、前々回1989-1990年(約1年1か月)より長くなっています(過去の黒潮大蛇行についていは「黒潮大蛇行の歴史」参照)。これより長い大蛇行は1986-1988年(約1年8か月)までさかのぼります。

Fig3

図3: JCOPE2Mで推定と予測した冷水面積(水深1000mの水温3℃以下の海域の面積)の1日毎の時系列で黒潮大蛇行を作る冷水渦の強さの指標。単位は104平方キロメートル。黒線は観測を取り入れつつ推定した実際の値(解析値)。点線が12月24日から1月25日までの予測。参考のために前回の大蛇行が終了した2005年の時の時間変化を薄い線で重ねた。

予測と実際(短期予測)

今回は1月20日から予測した1月26日までの結果を検証します。図4上段は、1月20日から予測した1月26日の黒潮の状態です(1日平均)。図4下段は、観測値を取り入れて実際に近いと考えられる1月26日の状態です。

おおむね良く予測できていました。予測と実際の違いで目立つのは、静岡県沖の時計回りの渦が予測(図上段)は実際よりも西に広がりすぎていたことです。

Fig4

図1: [上段]1月20日から予測した1月26日の予測値。[下段]観測値を取り入れて推測した1月26日の解析値。矢印は海面近くの流れ(メートル毎秒)、色は海面高度(メートル)。青は八丈島の位置。

  1. [1]2017/7/12号「黒潮流路はどれくらい先まで予測できるのか」でも解説しているように、1ヶ月はある程度の精度をもって予測できる限界に近い長さです。毎月の検証では、限界に挑戦するため1ヶ月先の予測の検証をしています。仮に検証で1ヶ月先の予測が当たっていない部分があっても、たとえば1週間先の予測が外れ続けたという意味ではないことにご注意ください。
  2. [2]黒潮大蛇行時の室戸岬沖の黒潮の様子については「黒潮大蛇行時の四国沖の状況」で解説しています。