まとめ
見通し(長期予測)
海洋予測モデルJCOPE2Mで、約2か月先までの予測を行っています。図2はJCOPE2Mによる水深100メートル[2]での8月29日の水温(色、℃)と流れ(矢印)です。赤色が黒潮の影響を受けた暖かい水温で、青色が親潮の影響を受けた冷たい水温です。
北海道から東北沖の海は、黒潮続流による暖水や黒潮続流からちぎれた暖水渦(A, B)に影響を受けて水温が高くなっています。
親潮の影響を受けている範囲の指標として、水温5°Cに太い黒線を引いています。水温5°C線は東北沿岸近くでは(図2①)、平年並(細い青線)の南下です。
それより東では、水温5°C線(太い黒線)が平年(細い青線)より大幅に北に後退しています(図2②)。暖水渦の影響で大きく水温が上昇しているためです。
暖水渦A,Bの隙間をぬうようにして親潮の冷水が渦や支流の形で南に入っています(C, D)。
図3は図2に対応する2019年8月29日から10月31日までの予測をアニメーションにしたものです。図2のような状況はしばらく続きそうです。

図2: JCOPE2Mによる8月29日の水深100メートルでの水温(色、℃)と流れ(矢印)。赤色が5°Cより高い黒潮の影響を受けた暖かい水温で、青色が5°Cより低い親潮の影響を受けた冷たい水温。親潮の影響を受けている範囲の指標として水温5°Cに太い黒線を引いた。細い青線は1993-2018年平均の水温5°C線で平年の親潮の影響範囲。
図3: 図2に対応する2019年8月29日から10月31日までの予測のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。
詳細(短期予測)
より高い水平分解能のモデルJCOPE-T DAで短期予測(約2週間先)も行っっています。毎日更新されるJCOPE-T DAの予測は、JAXAが提供を開始した可視化サイトで見ることができます。図の見方は「JAXAと共同で新しい海洋予測を開始」で解説しています。
図4は「1. 人工衛星「ひまわり」観測とJCOPE-T DAを比較するサイト」で親潮付近を見たものです。時間は9月1日10時台(日本時間)の1時間平均で、左が気象衛星「ひまわり8号」によるクロロフィルaの観測、右がJCOPE-T-DAによる水温の推定値です。
図2のC, Dで説明した親潮水の南下に対応して、栄養塩が豊富な親潮ではクロロフィルaの濃度(植物プランクトンの濃度に対応)が高くなっている様子が見えます(図4左)。一方、黒潮に起源を持つ暖水渦Aの中心ではクロロフィルaの濃度が低くなっています。

図4: 「人工衛星「ひまわり」観測とJCOPE-T DAの比較するサイト」で親潮付近を拡大した図。時刻は9月1日10時台(日本時間)の1時間平均。左が気象衛星「ひまわり8号」によるクロロフィルaの観測。灰色でデータが無い場所は雲などで観測できなかった所。右がJCOPE-T-DAによる水温の推定値。
図5は9月1日午前9時から9月31日午前9時までの予測のアニメーションです。左が海面、右が水深100mです。右の水深100mの図には、親潮の勢力の範囲の指標として、水温5℃線を黒太線線にしています。JCOPE-T DAは潮の満ち引きも計算しているので、1時間毎の図でアニメーションにしています。
最新の予測は上記JAXAの可視化サイトでご確認ください。
図5: 2019年9月1日午前9時から9月13日午前9時までの1時間毎の予測のアニメーション。左が海面、右が水深100m。矢印(ベクトル)が海面の流れの向きと強さ(メートル毎秒)。色が海面水温(℃)。温度の等温線も2℃毎に白色で加えてある。水深100mの右の図には親潮の勢力の指標として水温5℃の等温線も黒太線で加えている。クリックして操作してください。全画面表示にしたり、途中で停止したりできます。

黒潮親潮ウォッチでは、親潮の現状について月に一回程度お知らせします。親潮に関する解説一覧はこちらです。 JCOPE-T-DAによる短期予測はJAXAのサイトで見ることができます。 4日毎に更新されるJCOPE2Mによる親潮の長期解析・予測図はJCOPE のweb pageで見られます。親潮関係の図の見方は2017年1月18日号と2017年2月1日号で解説しています。
- [1]親潮第一分枝・第二分枝については親潮はどんな流路になっているの?で解説しています↩
- [2]天気の影響を受けやすい海面よりも海流の状態を反映していると考えられます。↩