東アフリカでは、2021年11月、短い雨季にも関わらず、極端に降水量が少なく、現在も干ばつに見舞われていることが世界のメディアで報じられています(例えば、https://fews.net/east-africa/, https://www.nature.com/articles/d41586-020-02698-3 など)。JAMSTECアプリケーションラボの研究成果などでは、東アフリカの短い雨季は、インド洋ダイポールモード現象(注1)の影響を強く受けることが示されています(例えば、Black et al. 2003; Saji and Yamagata 2003; Behera et al. 2005)。インド洋ダイポールモード現象の正イベントあるいは負イベントの発生時に、極端な洪水あるいは干ばつが、それぞれ発生しやすくなります。2016年に負のダイポールモード現象が発生した際は、東アフリカの多くの地域で深刻な干ばつが発生し、食料や飲み水の安全が脅かされました(Lu et al. 2018)。
2021年の秋にも負のインド洋ダイポールモードが発生していました(図1)。
これは、JAMSTECアプリケーションラボのSINTEX-F季節予測システムの予測通りでした(図2、あるいは2021年6月24日JAMSTECコラム)。
負のインド洋ダイポールモード現象に伴う海表面水温の異常は、2021年12月になり衰退し始めていますが、その降水量への影響は続いています。SINTEX-Fシステムの2021年10月1日時点での予測では、11月から来年の2月まで、東アフリカの干ばつが持続する可能性が高いことを示しています(図3)。同地域での干ばつの被害が今後益々深刻化することが懸念され、被害を軽減するために何らかの対策が必要であるとも言えるかもしれません。
- 注1:インド洋ダイポールモード現象 インド洋のダイポールモード現象は、熱帯インド洋で見られる現象で、海洋と大気が相互に作用しながら発達します(Saji et al. 1999)。数年に1度くらいの頻度で、夏から秋にかけて発生します。ダイポールモード現象には正と負の現象があり、特に負の現象が発生すると、熱帯インド洋の南東部で海面水温が平年より高く、西部で海面水温が低くなります。この水温変動によって、通常時でも東インド洋で活発な対流活動が、さらに活発となり、インドネシアなどでは大雨・洪水の被害が甚大化します。一方で、東アフリカでは干ばつが発生しやすくなります。
参考文献
Behera, S. K., J.-J. Luo, S. Masson, P. Delecluse, S. Gualdi, A. Navarra,and T. Yamagata, 2005: Paramount impact of the Indian Ocean dipole on the East African short rains: A CGCM study. J. Climate, 18, 4514–4530.
Black, E., J. Slingo, and K. R. Sperber, 2003: An observational study of the relationship between excessively strong short rains in coastal East Africa and Indian Ocean SST. Mon. Wea. Rev., 131 , 74–94.
Saji, N. H., and T. Yamagata, 2003: Possible impacts of Indian Ocean Dipole mode events on global climate. Climate Research, 25, 151-169.
Lu, B., Ren, HL., Scaife, A.A. et al. An extreme negative Indian Ocean Dipole event in 2016: dynamics and predictability. Clim Dyn 51, 89–100 (2018). https://doi.org/10.1007/s00382-017-3908-2
Saji, N. H., B. N. Goswami, P. N. Vinayachandran, and T. Yamagata, 1999: A dipole mode in the tropical Indian Ocean. Nature, 401, 360–363.