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海底はどこでつくられるのか?「Pillow」という名の岩石「枕状溶岩」で海洋地殻を読み解く

それは、長い時間、水中で溶岩がどんどん流れていくと、外側のソーセージの皮のようなところが内側に向かって厚くなり、やがて写真のように細いトンネルになるからです。

外側の皮のところが薄いと水圧で潰れてしまうので(実際にそのようなものも海底で見かけます)、細い穴になるまで外側が厚くなり、溶岩がうまく流れ終わって中空のままになると、このようにちくわの形になります。ちなみに、流れた一番先の溶岩はそれ以上流れ出ないので、真ん中に穴はなく、すべて詰まっています。

海洋地殻をつくる岩石だった!

写真をよく見ると、断面の外周部が少し黒っぽいのがわかります。

これは、水に触れて急冷されて、岩石に含まれる成分の一部がガラス質(結晶になっていない固体)になったところです。むやみに触るとガラスの破片が手に刺さることがあり、注意する必要があります。

一般に、玄武岩は黒色や濃い灰色をしているのですが、枕状溶岩は玄武岩質にもかかわらず赤黒っぽい色や緑っぽい色をしています。これは、マグマとして海中に噴出してから時間がたち、含まれていたガラス質が変質したからです。ガラスは溶岩の中でもっとも変質しやすいものです。

それと、割れ目のような筋が中心から放射状に入っているのが見えるでしょうか。これも水に急冷されて収縮したときに出来たもの(節理)です。

この枕状溶岩を採取したインド洋の海底は、「海嶺」と呼ばれる場所です(中央インド洋海嶺)。海嶺とは、火山活動の盛んな海底の山脈のことです。中でも、そこから新たな海洋プレートが作られ、海洋底が広がり始めているところは、「海洋中央海嶺」と呼びます。そこはまた両側に広がる二つの海洋プレートの境界でもあります。この岩石を採取したのは、そんな中央海嶺のあたりです。

図3:「しんかい6500」第0924潜航によって調査した中央インド洋海嶺の位置(図/JAMSTEC)

海の底となる海洋地殻を構成する岩石そのものです。これを採取して詳しく調べることで、地球の表面(地殻)がどのように出来上がったのかという謎を少しずつひもとくことができます。最近海洋底のつくり方について新しいモデルもJAMSTEC(ジャムステック)から提出されました。

参考

JAMSTEC深海映像・画像アーカイブスでは、この枕状溶岩を採取したとき(中央インド洋海嶺/「しんかい6500」第924潜航)に撮影した映像や画像が見られます。

海底にあるはずの枕状溶岩が陸地で見られる理由

実は、この水の中で出来る枕状溶岩は、陸地でも見られます。

もちろん、日本にもあります。それも、山の中にあったりします。かつて、そこが海の底だった証拠です。

例えば、伊豆半島(静岡県)の山の中には、道路から見られる枕状溶岩があります。「一色の枕状溶岩」と呼ばれていて、「伊豆半島ジオパーク」の見所のひとつになっています。

参考:伊豆半島ジオパーク「一色の枕状溶岩」

海底はどこでつくられているのか!?

どうして地球は、今このような姿をしているのか。

そんな根源的なひみつにかかわる一端を、この枕状溶岩は教えてくれます。

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