今年のサンマは?(親潮ウォッチ2016/08)

水温の全体的な状況

姉妹サイト「季節ウォッチ」が予測していたように、暑い日が続いています。海の状態はどうなっているでしょうか。まずは水温の全体的な状況を見てみましょう。図1は、7月16日と8月6日の海面水温が平年(1993から2012年の20年平均)より高いか(赤っぽい色)、低いか(青っぽい色)、をJCOPE2のデータを用いて見たものです。7月22日号で見たように、7月16日(図1上段)の段階で、日本の周辺のほとんどの場所で平年より水温が高い状態でした。8月6日(図1下段)になると、平年より水温が高い場所はさらに広がり、色も濃くなっています。つまり、日本の周りの海も猛暑になっています。沿岸での赤潮や、沖縄のサンゴの白化への影響などが懸念されます。接近してきた場合の台風への影響も心配です。

東北沖(A)と北海道南東(B)には特に平年より水温が高い場所が見られます。以下では、これらについて詳しく見てみましょう。

図1: JCOPE2再解析による海面温度の平年(1993年から2012年の平均)との差(℃)。[上段]2016年 7月16日。[下段] 2016年8月6日。


最近の黒潮続流と親潮

東北沖(図1のA周辺)の高温には黒潮続流の状態が、北海道南東(図1のB周辺)の高温に親潮の状態が反映されています。海流の影響をよく見るために、2016年8月6日の水深100メートルでの水温と流速を図2左にしめします。比較のために、図2右には、平年(1993から2012年の20年平均)の値をしめします。

2016/07/22号「暴れる黒潮続流」で解説したように、今年の黒潮続流(図2左)は平年より(図2右)大きく蛇行しながら流れています。この蛇行とそこから切り離される暖水渦(図2左のW1やW2)のために、黒潮から流れてきた水が東北沖に入りやすくなっており、水温が高くなる原因となっています。

次に親潮を見ると、親潮第二分枝(OY2 ※1)にあたるものは平年並みですが、暖水渦が居座っているために(図2左のW3)沿岸で親潮が南下しておらず、平年(図2右)の親潮第一分枝(OY1 ※1)にあたるものが小さい、またはほとんどありません。これが親潮域で平年より水温が高くなっていることに貢献しています。

図2: a) JCOPE2による2016年8月6日の水深100メートルでの温度(色, ℃)と流れ(矢印, メートル毎秒)。b) 平年(1993年から2012年の平均)の8月6日の温度と流れ。

 

親潮の勢力の指標である親潮の面積(図2の点線領域での水深100メートルの水温5度以下の水の広がり)の時間変化を見ると(図3の赤線)、親潮域の高温について触れ始めた昨年2015年の5月頃(2015/5/22号「親潮域があったかくなっているって聞いたけど?」)から、平年(黒細線)のはるか下、通常の範囲(灰色の範囲)を超えてさらに小さい面積になっています。親潮面積が小さいということは、冷たい水(5度以下)の範囲が狭い、すなわち、親潮域があたたかいことを意味します。今年の6月には平年との差がやや縮まっていましたが(7/22号)、7月以降は再び平年との差が開いています。今後2カ月の予測(図3の青線)でも、平年より小さい値が続きそうです。

図3: JCOPE2再解析データから計算した親潮面積の時系列(単位104 km2)。赤線が2014年11月から現在までの時系列。黒細線は平年(1993-2012年)の季節変化。灰色の範囲は平均からプラスマイナス標準偏差の範囲。

 

親潮面積の7月の月間平均(図4)は、昨年に続いて過去2番めに小さい値です。6番目であった6月(7/22号)に比べて順位が上がっています。

図4: 親潮の7月平均面積を各年で比較。単位は104 km2。棒グラフの上の数字は1993年以降の小ささの順番。


水産研究・教育機構によるサンマ長期漁海況予報

国立研究開発法人 水産研究・教育機構は、7月29日にサンマ長期漁海況予報(※2)を出しており、「親潮第1分枝の南限は極めて北偏、釧路沖の暖水塊は停滞し、津軽暖流の張り出しは強いと予想され る。そのため、道東~三陸海域の水温は高めで経過し、サンマの漁場への来遊を阻む可能性が高い。」としています。 つまり、上で解説したような親潮の状況を反映して、サンマが親潮に乗って日本に沿岸に来るのが難しくなりそうです。気になるところです。

 


※1 親潮第一分枝、第二分枝については2015/07/03号「親潮はどんな流路になっているの?」で解説しています。

※2 平成28年度北西太平洋サンマ長期漁海況予報(水産庁プレスリリース)の参考資料 (pdf) (2016/7/29)
参考資料
1) 勝川俊雄公式サイト「今年のサンマ漁は厳しくなりそうです」(2016/8/3)
2) 国立研究開発法人水産研究・教育機構 「平成28年度第3回東北海区海況予報」(2016/7/29)


oyashio-mini2

黒潮親潮ウォッチでは、親潮の現状について月に一回程度お知らせします。親潮に関する解説一覧はこちらです。 JCOPE-T-DAによる短期予測はJAXAのサイトで見ることができます。 週に2回更新されるJCOPE2Mによる親潮の長期解析・予測図はJCOPE のweb pageで見られます。親潮関係の図の見方は2017年1月18日号2017年2月1日号で解説しています。