2016年12月22日から2017年1月19日の予測を検証します

毎月の月末は、過去1カ月の予測を検証する予定です。今回は2016年12月28日号の、2016年12月22日から2017年1月19日までの予測を検証します。

図1上段は、2016年12月22日から予測した2017年1月19日の黒潮の状態です。12月28日号の予測のポイントは、八丈島付近にあった黒潮の流路が北に移動し、八丈島の北を流れる接岸流路になるということでした。その予測は当りました(図1下段)[1]

一方で、12月28日号では接岸流路になった後はそれが長く続くと予測していましたが(図1上段)、実際には接岸流路lが予測よりも発達し(図1下段)、八丈島の南を流れる離岸流路に向かっています。今週の現状・予測も参照してください。また、房総半島沖の黒潮の離岸を予測していましたが(図1上段)、実際には黒潮が房総半島に近づいています(図1下段)。

2017年1月19日頃の実際の様子については、図2の「ひまわり8号」による海面水温[2]も参照してください。離岸傾向lに対応する冷たい水温が南へと伸びています。

図3は2016年12月22日から2017年1月19日までの予測値(上段)と実際(下段)の比較をアニメーションにしたものです。

Fig1

図1: [上段]2016年12月22日から予測した2017年1月19日の予測値。[下段]観測値を取り入れて推測した2017年1月19日の解析値。矢印は海面近くの流れ(メートル毎秒)、色は海面高度(メートル)。赤は八丈島の位置。アルファベットj,k..は接岸・離岸傾向の波(今週号の現状・予測参照)。

 

Fig2

図2: 「ひまわり8号」が観測した2017年1月19日の一日平均海面水温(°C)。JAXA提供の1時間データを合成した。白の空白は雲がかかって観測できなかった所。赤星()は八丈島の位置。アルファベットj,k,,は図1下段の接岸・離岸傾向の波に対応。

 

 


図3:
2016年12月22日から2017年1月19日までの予測(上段)と実際(下段)の比較のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。

kurokatsu


八丈島付近の黒潮流路について、詳しく見てみましょう。過去の解説で[3]、伊豆諸島付近の黒潮流路を判断するには、八丈島での海面高度(潮位)を見れば良いことを説明しました。流れの強い黒潮をはさんで、本州に近い方は海面高度が低い、逆の沖側では海面高度が高いという関係があるからです(図1参照)。このため、黒潮が本州に近づいて島の北を流れる接岸流路であれば、島周辺の海面高度は高くなります。逆に、黒潮が島の南を流れる離岸流路が発達すれば、島周辺の海面高度は低くなります。

図4は、JCOPE2Mで観測値を取り入れて再現した八丈島の海面高度(★による点線)と、その予測(青線、赤線)です。実際の海面高度の変化(★による点線)を見ると、昨年12月末から今年の1月始めにかけて上昇(接岸傾向)しています。2016年12月28日号の12月22日からの予測では(青線)、高い海面高度(接岸流路)で安定すると予測していましたが、実際には(★による点線)、傾向が反転して海面高度が低下(離岸傾向)しています。

最新の予測(赤線、今週号の予測)では、離岸流路が発達(海面高度の低下)しますが、それは一時的で、その後は再び接岸流路(海面高度の上昇)に戻ると予測しています。

Fig4

図4: JCOPE2による八丈島周辺の海面高度の予測の2016年11月1日からの時系列。青線が2016年12月22日からの予測。赤線が2017年1月19日からの予測。★による点線が観測値を取り入れて推測した現実に近いと考えられる値。

 

  1. [1]海上保安庁は2016年12月30日頃に八丈島の北側を流れる流路になったと判断しています。「本州南方の黒潮流路について」(海上保安庁 2017/1/4)
  2. [2]ひまわり8号」の海面水温については、2015/10/9号・気象衛星「ひまわり8号」で見た黒潮を参照。JAXA提供の「ひまわり8号」海面水温データは、2016年8月31日からバージョン1.2にバージョンアップしています。過去の「ひまわり8号」の水温データを使った解説一覧はこちら
  3. [3]過去の八丈島水位の解説一覧はこちら