観測で見る小蛇行通過(2017年4月から6月初めまで)

日本南岸を通過した小蛇行は、黒潮の流路を大きく変化させました。2017年4月から6月初めまでの小蛇行の通過の様子を、観測(「ひまわり8号」、黒潮牧場ブイ、串本・浦神の潮位差)で見てみました。

ひまわり海面水温

2017/05/03号「小蛇行発達の様子」では、黒潮の小蛇行が、2017年初めから4月末までに、九州東岸で発達する様子を見ました。今回はその続きを見てみましょう。

図1は、2017年4月24日、5月14日、6月5日の海面水温を、気象衛星「ひまわり8号」[1]の観測で見たものです。温度の高い帯として見えるのが黒潮です。

4月24日には(図1上段)、黒潮が九州東岸から大きく離れ、小蛇行しています。その影響で、黒潮と九州の間は冷たい海水が広がっています。小蛇行は、すでに四国・足摺岬(下で説明する13号ブイの近く)に達しています。

その後、小蛇行の一部(小蛇行1)は、黒潮の下流(東)へと移動を始めました。5月14日(図1中段)には、九州から四国まで広い範囲で離岸しています。小蛇行は、紀伊半島にも近づいています。

6月5日には(図1下段)、小蛇行1はさらに下流に移動し、東海沖まで移動しています。紀伊半島沖では小蛇行の影響が残っており、黒潮の離岸が続いています(下の串本・浦神潮位差の解説参照)。この小蛇行が大蛇行に発達するかが注目されます(APLコラム「黒潮大蛇行は発生するか?」)。

Fig1

図1: 2017年4月24日、5月14日、6月5日の「ひまわり8号」で観測された海面水温を見た図。白い空白は雲で観測出来ない場所。は黒潮牧場の位置。は串本・浦神の潮位計のある位置。は八丈島の位置。

 

図2は、図1と同様の図を、2017年4月1日から6月5日までアニメーションにしたものです。小蛇行の通過にともなって黒潮の流れる場所がダイナミックに変化する様子に注目してみてください[2]


図2:「ひまわり8号」で観測された海面水温を2017年4月1日から6月5日まで見たアニメーション。白い空白は雲で観測出来ない場所。クリックして操作して下さい。途中で停止することもできます。

黒潮牧場ブイ(四国沖)

四国沖での黒潮の動きを、黒潮牧場ブイで観測された流速で確認してみましょう[3]。黒潮牧場13号ブイは足摺岬沖に、10号ブイは室戸岬沖に位置しています(位置は図1参照)。図3は、黒潮牧場13号ブイと10号ブイで測られた海面近くの海流の、4月1日から6月5日までの1日毎の時間変化です。縦軸が日付になっており、矢印は、方向が流れの向き、長さが流れの強さになっています。折れ線グラフは東西向きの強さで、赤で塗っているのが東向きを意味しています。黒潮が岸の近くを流れると流速が大きくなるので、黒潮が接岸→流速大黒潮が離岸→流速小という関係があります。接岸・離岸の変化は上流から下流に移動する性質があるので、流速の増減も上流(足摺岬沖・13号ブイ)から下流(室戸岬沖・10号ブイ)の順に変化します。

図3を見ると、足摺岬沖の13号ブイでは4月下旬から、室戸岬沖の10号ブイでは5月中旬から流速が小さくなっています。この時に小蛇行1が通過していることが分かります。室戸岬沖の10号ブイでは、小蛇行が通過した後に6月には流速が回復しており、黒潮が再び接岸しています。足摺岬沖の13号ブイでは、小蛇行2の影響も受けているので、小蛇行1が通過した後も、流速が小さいままだったり、流速が一時的に大きくなったりと不安定な動きをしています。

Fig3

図3: 足摺岬沖黒潮牧場13号(左)と10号ブイ(右)で観測された表層流速の1日毎の時間変化(2017年4月1日から6月5日)。単位はノット。矢印は、方向が流れの向き、長さが流れの強さ。折れ線グラフは東西向きの強さで、赤で塗っているのが東向き。データは高知県漁海況情報システムから入手した。

串本・浦神潮位差(紀伊半島沖)

小蛇行の通過により、紀伊半島・潮岬でも黒潮が離岸しています。図4は、潮岬での離岸・接岸の指標である串本・浦神水位差の時間変化です。串本・浦神水位差については、2016/4/1号「潮岬への黒潮接岸判定法は?: 串本・浦神の潮位差」で解説しました[4]黒潮が接岸→水位差大黒潮が離岸→水位差小という関係があります。

図4を見ると、5月中旬から値が急落しています。小蛇行1が紀伊半島に達し、黒潮が離岸したためです。6月5日の時点で値は小さいままで、小蛇行1の影響がまだ残っています。

Fig4

図4: 串本・浦神潮位差(日平均)の時系列(2017年4月1日から6月5日)。データは気象庁から入手した。

  1. [1]ひまわり8号」の海面水温については、2015/10/9号・気象衛星「ひまわり8号」で見た黒潮を参照。JAXA提供の「ひまわり8号」海面水温データは、2016年8月31日からバージョン1.2にバージョンアップしています。鹿児島県水産技術開発センター和歌山水産試験場からも「ひまわり」の画像が公開されています。過去の「ひまわり8号」の水温データを使った解説一覧はこちら。
  2. [2]春から夏に向けて全体的に水温が高くなっていく様子も見られます。
  3. [3]過去の黒潮牧場ブイの解説一覧はこちら
  4. [4]過去の串本・浦神潮位差の解説一覧はこちら

美山 透

海の変化は、漁業海運エネルギー天候など様々なことに影響します。海洋予測がもっと身近なものになるように、頭をしぼって書いています。