なぜ黒潮には異なる流路が存在するの?

2015年2月6日号の解説で述べたとおり、黒潮は日本南岸で流れる位置が大きく変化します。現在は、八丈島の南を流れる非大蛇行離岸流路を通っています。このような流路の大きな変化は、世界に他の海流では珍しい黒潮の特徴です。

なぜ、このような複数の流路があるのでしょうか?それにはいろいろな原因がからんでますが、ここでは海底地形の影響について見てみましょう。図1は日本南 岸の海底地形をしめしたものです。伊豆半島の南に伊豆海嶺と呼ばれる海底山脈(水深が浅くなっている所)が、黒潮に立ちはだかるように南北に伸びていま す。良く見ると、八丈島の北と南にやや深くなった海嶺の切れ目があるのが見えます。黒潮はできるだけ深いところを流れようとすることから、このどちらかを流れようとします(図1の赤矢印)。これが八丈島の北と南を流れる異なる流路が存在する理由です。

図2では3次元的に海流を見てみました。今年の1月1日(図2上段)には、黒潮は八丈島の北の海嶺の切れ目を通る接岸流路をとっていました。その後、1月31日(図2下段)に、八丈島の南の海嶺の切れ目を通る離岸流路に移行したのです(2015年1月30日号参照)。

関連解説:
2015年3月20日号では八丈島の潮位から黒潮流路を判定する方法を解説しています。

20150410_QA1

図1: 海底地形。色は海底の深さ(メートル)。データはETOPO1。

 

20150410_QA2

図2:地形と海流を3次元的に可視化したもの。色のついているのが海流の速さ (メートル毎秒)が大きい所で黒潮の流れ。(上段) 1月1日。(下段)1月31日。