2017年12月15日から2018年2月15日の予測(12月20日発表)

黒潮は、東海沖で大きく蛇行しています(黒潮大蛇行)。東海沖の蛇行のために、四国・室戸岬、紀伊半島・潮岬でも離岸しています。四国・足摺岬では接岸しています。房総半島では黒潮がやや離れつつあります。黒潮大蛇行は継続するでしょう。

JCOPE2の改良版であるJCOPE2M週2回の予測を行っています。ここでは2017年12月15日から2018年2月15日までの予測を解説します。

現状

図1と図2はJCOPE2Mで計算した12月15日と12月20日の黒潮の状態です。

黒潮は東海沖で大きく離岸しており、黒潮大蛇行と呼ばれる状態になっています[1](図1,2)。大蛇行にともない、四国・室戸岬、紀伊半島・潮岬でも離岸しています大蛇行を作っている反時計回りの大冷水渦の北側では、東海沿岸で西向きに暖水が入りやすい状況です[2](図1,2)。大冷水渦は東に広がり、黒潮の一部分または大部分が八丈島東側で北上しています(図1,2)。

房総半島沖では黒潮が近づいていましたが(接岸傾向a[3]図1)が、やや離れつつあります(離岸傾向b, 図2)。

四国・足摺岬では接岸しています(接岸傾向g、図1, 2)。

Fig1

図1: 観測値を取り入れて作成した12月15日の推測値。矢印は海面近くの流れ(メートル毎秒)、色は海面高度(メートル)。赤丸()が八丈島の位置。海面高度が低いところは海面水温が低いおおまかな関係があります。

 

Fig2

図2: 12月20日の予測値。

 

予測

図3・図4・図5・図6は12月27日・2018年1月3日・1月17日・2月15日の予測です。

東海沖の黒潮大蛇行は続きそうです(図3~6)。紀伊半島・潮岬での離岸も継続するでしょう(図3~6)。黒潮は八丈島の南から東にぬける時期があります(図3)。しかし蛇行が再発達するにつれて、八丈島の北から東にぬける典型的な大蛇行に戻ると予測しています(図4)。黒潮大蛇行については次の節で詳しく見ています。

足摺岬では、接岸傾向が続きそうです(図3~6)。室戸岬では、黒潮大蛇行の影響を受けて、離岸が続きそうです(図3~6)。房総半島沖では、離岸と接岸が繰り返されそうです(図3~6)。

図7は、12月15日から2018年2月15日までの予測をアニメーションにしたものです。

Fig3

図3: 12月27日の予測値。

 

Fig4

図4: 2018年1月3日の予測値。

 

Fig5

図5: 2018年1月17日の予測値。接岸・離岸の記号は略。

 

Fig6

図6: 2018年2月15日の予測値。接岸・離岸の記号は略。

 


図7: 2017年12月15日から2018年2月15日までの予測のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。

黒潮の大蛇行は今後どうなるか?

この欄では黒潮大蛇行の今後を検討します。図8下段にしめした図が典型的な黒潮大蛇行になった場合のイメージです。典型的な黒潮大蛇行には(1)蛇行が大きい(2)紀伊半島・潮岬での離岸(3)八丈島の北を流れるといった特徴があります。特徴をひとつずつ見てみましょう。

蛇行が大きいというのは北緯32度以南(図8の赤点線)まで蛇行するというのが目安です[4]。図8上段と中段は12月11日と12月18日に「ひまわり8号」が観測した海面水温です[5]。黒潮は温度の高い帯として見えています。12月11日(図8上段)でも12月18日(図8中段)でも、蛇行の内側の冷水が北緯32度よりも南まで広がっています。予測では、蛇行はさらに大きくなる可能性があります(図4,5)。

紀伊半島・潮岬での離岸も続いています(黒潮の温度の水温の高い帯と潮岬が離れている。図8上段、中段)。串本と浦神の日平均潮位差(気象庁)も小さいままであることから、離岸が継続していることがわかります[6]。予測でも潮岬での離岸は続きます(図3~図6)。

12月11日(図8上段)から12月18日(図8中段)にかけて冷水が八丈島付近まで広がり、黒潮が八丈島の東を北上している様子がうかがえます。黒潮の一部もしくは大部分が八丈島の南から東にぬけており、黒潮が八丈島の北を流れる典型的な黒潮大蛇行が崩れています。その後、蛇行が再び大きくなるにつれて八丈島の北から東にぬける典型的な大蛇行に戻ると予測しています(図4)。一般的には黒潮が八丈島の北を流れたほうが大蛇行が安定するとされていますが、黒潮が八丈島の南をひんぱんに流れながらも続いた1981~1984年の大蛇行という例外もあります[7]

典型的な黒潮大蛇行の流路が崩れる時期がありながらも、黒潮大蛇行は来年以降もしばらくは続きそうです(図3~図6)。

Fig8

図8:[上段]12月11日に「ひまわり8号」が観測した海面水温。は八丈島の位置。白くなっているところは雲がかかって観測できなかった所。[中段]同じく12月18日。[下段]典型的大蛇行になった場合の流れのイメージ。


  1. [1]黒潮大蛇行の記事のまとめはこちら
  2. [2]黒潮大蛇行時の東海沿岸への暖水進入については2017/9/13号「黒潮大蛇行で浸水被害?」を参照。
  3. [3]接岸と離岸の傾向を上流から一連のアルファベットで図示しています。赤字y,a,,が接岸傾向で、青字x,z,,が離岸傾向です。黒潮上に接岸・離岸傾向は交互にあらわれており、黒潮が波うっている様子をあらわしています。接岸・離岸傾向は黒潮の流れで下流に流されます。アルファベットは図1から図4まで共通で(前号とも共通ですが、あらためて記号を振り直したところもあります)
  4. [4]海上保安庁の用語の説明参照。http://www1.kaiho.mlit.go.jp/KANKYO/KAIYO/qboc/exp/yougo.html
  5. [5]「ひまわり8号」の海面水温はJAXA提供のデータです。2015/10/9号・気象衛星「ひまわり8号」で見た黒潮を参照してください。鹿児島県水産技術開発センター和歌山県水産試験場三重県水産研究所からも「ひまわり」の画像が公開されています。過去の「ひまわり8号」の水温データを使った解説一覧はこちら
  6. [6]串本・浦神潮位差については、2016/4/1号「潮岬への黒潮接岸判定法は?: 串本・浦神の潮位差」で解説したように、紀伊半島・潮岬で黒潮が接岸→潮位差大黒潮が離岸→潮位差小という関係があります。過去の串本・浦神潮位差の解説一覧はこちら
  7. [7]黒潮の流路と流量の変動に関する研究(川辺正樹, 2008)には、「ただし、八丈島の南を通過する割合がほぼ半分を占めた1981-84年の大蛇行のような例外もある。」という記述があります。


JCOPE2Mは4日毎に更新を行っています(解説参照)。JCOPE2Mの他の予測図についてはJCOPE のweb pageでご参照ください。図の見方は連載: JCOPE2解析・予測画像の見方で解説しています。