「ちきゅう」のための海流予測3 (1)黒潮大蛇行の中、第380次研究航海始まる

「ちきゅう」第380次研究航海始まる

海洋研究開発機構の地球深部探査船「ちきゅう」は、紀伊半島沖熊野灘で2018年1月12日から2月24日の期間、研究航海を行います。

掘削を行うには、「ちきゅう」は海に対して静止する必要があります。強い海流は「ちきゅう」が位置を保つのを難しくします[1]。そこで、わたしたちJCOPEグループは「ちきゅう」のために、紀伊半島沖熊野灘365次航海(「ちきゅう」のための海流予測)・室戸沖第370次航海(「ちきゅう」のための海流予測2)に引き続き、海流予測情報を提供します。海の一地点の海流予測をするのは難しい挑戦ですが、様々な予測のための情報、予測の注目ポイント、「ちきゅう」の海流・気象条件との闘い等の点に注目してください。

研究航海名 「南海トラフ地震発生帯掘削計画」及び国際深海科学掘削計画(IODP)
第380次研究航海
期間 2018年1月12日~2月24日
なお、気象条件や調査の進捗状況によって変更の場合があります。
海域 紀伊半島沖熊野灘
プレスリリース 地球深部探査船「ちきゅう」による国際深海科学掘削計画(IODP)第380次研究航海「南海トラフ地震発生帯掘削計画:南海トラフ前縁断層帯における長期孔内観測システム設置」の実施について

 

「ちきゅう」公式twitterより

 


今回の予測情報

今航海のための海流情報予測特設ウェブページを開設しています。

海流予測特設ウェブページ https://www.jamstec.go.jp/jcope/vwp/chikyu.2018.01/

黒潮親潮ウォッチでも、航海期間中は「ちきゅう」のための海流予測のハイライトを解説していきます。

黒潮大蛇行

2006年3月から4月に熊野灘で行われた第365次航海の時は、黒潮が流れるど真ん中で掘削作業が行われました。黒潮は最大5ノット[2]を超える流速に達しています。図1の上段は今回予測に使う予測モデルJCOPE-T-EAS[3]で推測した2016年4月15日の海面近くの流速です。黒潮の強い流れ(明るい色)が「ちきゅう」の掘削地点付近()を流れていることがわかります。

一方、現在は黒潮大蛇行[4]。と呼ばれる状態で、黒潮は大きく南を流れています。図1下段は今年1月15日の流速の推測値です。黒潮大蛇行のため、「ちきゅう」の掘削地点()では流速が小さいと推測しています。予測特設ウェブページでも、掘削地点の流速は1ノット前後を予測しています。そのため海流に関しては、掘削作業がやりやすい環境ではないかと思われます。一方で、冬の荒れた天気が問題になる期間があるかもしれません。

Fig1

図1: JCOPE-T-EASによる2016年4月15日(上段)と2018年1月15日(下段)の流速値(色と矢印)。単位はノット。

 

 

 

  1. [1]参考: National Geographic 日本版【連載】海の研究探検隊 JAMSTEC File8 巨大探査船「ちきゅう」を動かす3人の男  第2回「ちきゅう」、南海トラフで黒潮と闘う
  2. [2]「ちきゅう」のための海流予測では流速の単位にノットを使います。2ノット=1メートル毎秒です。
  3. [3]過去のJCOPE-Tを使用した記事一覧はこちら。
  4. [4]黒潮大蛇行の記事のまとめはこちら