2018年1月12日から3月15日の予測(1月17日発表)

黒潮は、東海沖で大きく蛇行しています(黒潮大蛇行)。東海沖の蛇行のために、四国・室戸岬、紀伊半島・潮岬でも離岸しています。四国・足摺岬では接岸しています。房総半島では黒潮が接岸とやや離岸を繰り返しています。黒潮大蛇行は継続するでしょう。

JCOPE2の改良版であるJCOPE2M週2回の予測を行っています。ここでは2018年1月12日から3月15日までの予測を解説します。

現状

図1と図2はJCOPE2Mで計算した2018年1月12日と1月17日の黒潮の状態です。

黒潮は東海沖で大きく離岸しており、黒潮大蛇行と呼ばれる状態になっています[1](図1,2)。大蛇行にともない、四国・室戸岬、紀伊半島・潮岬でも離岸しています大蛇行を作っている反時計回りの大冷水渦の北側では、東海沿岸で西向きに暖水が入りやすい状況です[2](図1,2)。

房総半島沖では黒潮の接岸とやや離岸が繰り返されており、現在はやや離岸です(離岸傾向d[3]、図1,2)。

四国・足摺岬では接岸しています(接岸傾向k、図1, 2)。

Fig1

図1: 観測値を取り入れて作成した2018年1月12日の推測値。矢印(ベクトル)は海面近くの流れの向き(メートル毎秒, 長いほど早い流れ)、色は海面高度(メートル, 相対値)。赤丸()が八丈島の位置。海面高度が低いところは海面水温が低いおおまかな関係があります。

 

Fig2

図2: 1月17日の予測値。

 

予測

図3・図4・図5・図6は1月24日・1月31日・2月14日・3月15日の予測です。

東海沖の黒潮大蛇行は続きそうです(図3~6)。紀伊半島・潮岬での離岸も継続するでしょう(図3~6)。黒潮が八丈島の北から東にぬける典型的な大蛇行流路がやや崩れて、一部が八丈島の南からぬける時期がありそうです(図3)。黒潮大蛇行については次の節で詳しく見ています。

室戸岬では、黒潮大蛇行の影響を受けて、離岸している期間が多そうです(図3~6)。足摺岬では、しばらく接岸している期間が多いですが(図3,4)、2月から3月に小蛇行ができやすくなると、離岸する時期があるかもしれません(図5, 6)。房総半島沖では、離岸と接岸が繰り返されそうです(図3~6)。

図7は、1月12日から3月15日までの予測をアニメーションにしたものです。

Fig3

図3: 1月24日の予測値。

 

Fig4

図4: 1月31日の予測値。

 

Fig5

図5: 2月14日の予測値。接岸・離岸の記号は略。

 

Fig6

図6: 3月15日の予測値。接岸・離岸の記号は略。

 


図7: 2018年1月12日から3月15日までの予測のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。

黒潮の大蛇行は今後どうなるか?

この欄では黒潮大蛇行の今後を検討します。図8下段にしめした図が典型的な黒潮大蛇行になった場合のイメージです。典型的な黒潮大蛇行には(1)蛇行が大きい(2)紀伊半島・潮岬での離岸(3)八丈島の北を流れるといった特徴があります。特徴をひとつずつ見てみましょう。

蛇行が大きいというのは北緯32度以南(図8の赤点線)まで蛇行するというのが目安です[4]。図8上段と中段は今年1月6日と1月15日の「ひまわり8号」が観測した海面水温を比較した図です[5]。黒潮は温度の高い帯として見えています。1月6日(上段)、1月15日(中段)とも、東海沖で冷水が北緯32度よりも大きく南まで広がっています。それを迂回して、黒潮が大きく蛇行しています。予測では、大きな蛇行はまだ続きます(図3~6)。

黒潮は潮岬で離岸しています(図8上段・中段、黒潮の高水温が潮岬が離れている)。串本と浦神の日平均潮位差(気象庁)も小さいままであることから、離岸が継続していることがわかります[6]。予測では潮岬での離岸も続きます(図3~図6)。

黒潮が八丈島の北を流れていることも、八丈島周辺の温度が高めになっていることからわかります(図8上・中段)。一般的には黒潮が八丈島の北を流れたほうが大蛇行が安定するとされています。予測では、八丈島の南を一時的に流れる可能性があります(図3)。

黒潮大蛇行はまだ続くでしょう(図3~6)。

Fig8

図8:[上段]2018年1月6日に「ひまわり8号」が観測した海面水温。は八丈島の位置。白くなっているところは雲がかかって観測できなかった所。[中段]同じく2018年1月15日。[下段]典型的大蛇行になった場合の流れのイメージ。


  1. [1]黒潮大蛇行の記事のまとめはこちら
  2. [2]黒潮大蛇行時の東海沿岸への暖水進入については2017/9/13号「黒潮大蛇行で浸水被害?」を参照。
  3. [3]接岸と離岸の傾向を上流から一連のアルファベットで図示しています。赤字e,g,が接岸傾向で、青字d,f,,が離岸傾向です。黒潮上に接岸・離岸傾向は交互にあらわれており、黒潮が波うっている様子をあらわしています。接岸・離岸傾向は黒潮の流れで下流に流されます。アルファベットは図1から図4まで共通で(前号とも共通ですが、あらためて記号を振り直したところもあります)、同じアルファベット、たとえば離岸傾向fが、上流から下流に位置が動いていることをしめしています。
  4. [4]海上保安庁の用語の説明参照。http://www1.kaiho.mlit.go.jp/KANKYO/KAIYO/qboc/exp/yougo.html
  5. [5]「ひまわり8号」の海面水温はJAXA提供のデータです。2015/10/9号・気象衛星「ひまわり8号」で見た黒潮を参照してください。鹿児島県水産技術開発センター和歌山県水産試験場三重県水産研究所からも「ひまわり」の画像が公開されています。過去の「ひまわり8号」の水温データを使った解説一覧はこちら
  6. [6]串本・浦神潮位差については、2016/4/1号「潮岬への黒潮接岸判定法は?: 串本・浦神の潮位差」で解説したように、紀伊半島・潮岬で黒潮が接岸→潮位差大黒潮が離岸→潮位差小という関係があります。過去の串本・浦神潮位差の解説一覧はこちら


JCOPE2Mは4日毎に更新を行っています(解説参照)。JCOPE2Mの他の予測図についてはJCOPE のweb pageでご参照ください。図の見方は連載: JCOPE2解析・予測画像の見方で解説しています。