暖水渦の動き(親潮ウォッチ2018/6)

最近の親潮の様子を見ています。親潮が暖水渦にさまたげられていましたが、その影響は弱まりつつあるようです。

全体的な状況

まず、日本周辺の水温状況を見てみましょう。図1は、2018年4月6日と、6月7日の、海面水温の平年との差を見たものです[1]。平年より高い場所が赤っぽい色、低い場所では青っぽい色になっています。

6月現在(図1下)、全体的に日本周辺の海域は平年より高くなっています。4月には平年より冷たかった日本海も(図1上)、6月には平年より水温が高くなっています(図1下D)。姉妹サイトの「季節ウォッチ」では、夏に平年より高い日本周辺の水温を予測しています(季節ウォッチ「2018年5月号:今年の夏の天候は?」図3)。

親潮周辺海域では、特に平年より高い海域が見られます。4月には東北沖を中心に平年より高かったのが(図1上)、6月には北海道南東沖にも広がっています(図1下A)。次の節以降で詳しく見ています。

黒潮大蛇行が現在発生しており(黒潮予測記事参照)、それにともなう冷水渦(B)で、日本南岸の水温は平年より冷たくなっています。その北では東から西へ沿岸沿いに黒潮から暖水が流入しているため、関東から東海沿岸にかけて海面水温が平年よりなっています(図1下C)。

Fig1

図1: 海面温度の平年との差(℃)。[上段]2018年4月6日。[下段] 2018年6月7日。

 

親潮の様子(海面)

親潮周辺の様子を詳しく見ていきます。図2左は、図1下段を親潮域で拡大した図です。図2左のa~dの海域などでは平年より高くなっています。水温が高いのは海流(暖水渦)の影響だと考えられます。図2右は、対応する海面温度そのもの(色)と、流れ(矢印)です。a~dの位置に時計回りの暖水渦が見られます。

Fig2

図2: [左図] 2018年月6月7日の親潮周辺の海面温度の平年との差(℃)。[右図] 同じく2018年6月7日の海面水温(色、℃)と流れ(流線)。

親潮の様子(海面下)

海流の様子をより良くみるために、天気の影響を受けにくい海面下の水深100メートルの様子を見てみましょう(図3左図)。暖水渦の影響が大きかった2年前の状況とも比べます(図3右)。暖水の影響で、親潮が岸沿いに南下しにくくなっています(図3左)。ただし、強い暖水渦のあった2年前ほどではありません(図3右e)。

Fig3

図3: 水深100メートルでの水温(色、℃)と流れ(流線)。親潮勢力の指標として水温5度に赤細線で等値線。青枠は図6の計算に使用。[左図]今年の6月7日。[右図] 2年前の6月7日。

暖水渦の動き

図4は、図3の青枠を拡大した、水深100mでの2018年4月6日から6月7日までの水温(色)と流れ(流線)ののアニメーションです。北海道南東沖では、5月までに暖水渦の影響が強まり温度が高くなっていますが、その後弱まりつつあるように見えます。


図4: 親潮域(図3の青枠)の水深100mでの2018年4月6日から6月7日までのJCOPE2Mによる水温(色、℃)と流れ(流線)ののアニメーション。親潮勢力の指標として水温5度に赤細線で等値線。クリックして操作してください。途中で停止もできます。

6月7日からの予測

図5は、JCOPE2Mで6月7日から予測した6月20日の親潮域の水深100mの水温・流れ(左図)と、平年[2](右図)を比較しています。水温5度の等値線が親潮の勢力の指標になっています。北海道南東の暖水渦の影響は弱まり、平年の親潮第一分枝(①)と第二分枝(②)と比べて(右図)、親潮が南下しにくいということはなさそうです[3](左図)。

図6は、図5に対応する6月7日から8月9日までの予測をアニメーションにしたものです。

Fig5

図5: JCOPE2Mで2018年6月7日から予測した6月20日の親潮域の水深100mでの水温(色、℃)と流れ(流線)の図(左図)と、平年(右図)の比較。親潮勢力の指標として水温5度に赤細線で等値線。青枠は図7の計算に使用。

 


図6: 親潮域の水深100mでの2018年6月7日から8月9日までの水温のJCOPE2Mによる水温(色、℃)と流れ(流線)の予測(左図)と、平年(右図)の比較のアニメーション。親潮勢力の指標として水温5度に赤細線で等値線。青枠は図7の計算に使用。クリックして操作してください。途中で停止もできます。

親潮面積

JCOPE2Mによる推定によれば(図7青太線)、親潮の勢力の指標である親潮面積(図3の青枠での水深100メートルの水温5度以下の水の広がり)[4]は、4月から5月にかけて、暖水渦の影響により、平年(黒細線)よりもかなり小さな値が続いてきました。親潮ウォッチ2018/4では、平年並みの値を予測していたので、予測よりも暖水渦の影響が大きかったことになります。6月になって親潮面積の値は平年並みになっています。今後は平年並みの値を予測しています(黄点線)。

渦の動きの予測は難しいので、今後予測が変わる可能性があります。最新の予測は週2回更新されるJCOPE のサイトでチェックしてください。

Fig7

図7: 親潮面積の時系列(単位104 km2)。青線が2017年1月から現在までのJCOPE2Mから計算した時系列。黒細線はJCOPE2M再解析による平年(1993-2016年)の季節変化。灰色の範囲は平均からプラスマイナス標準偏差の範囲。黄点線は2018年6月7日からのJCOPE2Mによる予測。

 

  1. [1]この記事では、今年の値はJCOPE2Mを使っています。平年の値はJCOPE2M再解析の1993~2016の平均を使っています。
  2. [2]1993から2016年の平均。
  3. [3]親潮第一分枝・第二分枝については「親潮はどんな流路になっているの?(親潮ウォッチ2015/7)」の解説参照。
  4. [4]親潮面積については、「親潮が記録的なあたたかさ(親潮ウォッチ2015/9)」で解説しています。

黒潮親潮ウォッチでは、親潮の現状について月に一回程度お知らせします。親潮に関する解説一覧はこちらです。週に2回更新される最新の親潮の解析・予測図はJCOPE のweb pageで見られます。親潮関係の図の見方は2017年1月18日号2017年2月1日号で解説しています。

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美山 透

海の変化は、漁業海運エネルギー天候など様々なことに影響します。海洋予測がもっと身近なものになるように、頭をしぼって書いています。