毎月、過去1カ月の予測を検証する予定です[1]。

予測と実際(長期予測)

今回は10月31日号の、10月25日から予測した11月22日までの結果を検証します。10月31日号では黒潮大蛇行が続くと予測しました。その予測は当たっています。

図1上段は、10月25日から予測した11月22日の黒潮の状態です。図１下段は、観測値を取り入れて実際に近いと考えられる11月22日の状態です。図2は、同じく予測値(上段)と実際(下段)の比較を、10月25日から11月22日までのアニメーションにしたものです。

11月22日の予測(図1上段)は、実際(図1下段)の黒潮大蛇行の特徴である、潮岬が継続して離岸していること、黒潮の最南下点が北緯 32 度より南に位置することを予測できていました。伊豆諸島付近では八丈島の北を流れる流路が続くと予測しており、それも当たっていました。ただし、本州への接岸位置は西寄り過ぎました。

四国・室戸岬で離岸が続くと予測していました^[2]。これもその通りでした。足摺岬では接岸かやや離岸と予測していました。その予測も悪くありませんでしたが、11月22日に予測では接岸、実際はやや離岸という違いがありました。

房総半島沖では、離岸した状態がしばらく続くと予測してましたが、予測ほどは離岸が大きくなかったようです(図2の動画参照)。

10月31日号の予測では、九州の東にも大きめの離岸(小蛇行)が発達すると予測していました(図1上)。実際に小蛇行は現れていません(図1下)。JCOPE2Mの長期予測では小蛇行が実際より発達しやすいという癖があるようです。

 

図2: 10月25日から11月22日までの予測(上段)と実際(下段)の比較のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。

黒潮大蛇行を作る渦の強さ(長期予測)

大蛇行を作る渦の強さを数値化するために、2014/3/14号「深海から黒潮大蛇行のこれからを予測する」で、深層の冷水面積(水深1000mの水温3℃以下の海域の面積)を渦の強さの指標として導入しました。

図3の点線は、10月31日号による冷水面積の変化です。やや減を予測しており、実際(黒線)に近い予測でした。渦の強さが強くなっていることで、黒潮大蛇行が長引きそうな状態になっています。

黒潮大蛇行が昨年8月末に始まってから1年3か月たっており、前回2004-2005年(約1年2か月)、前々回1989-1990年(約1年1か月)より長くなっています(過去の黒潮大蛇行についていは「黒潮大蛇行の歴史」参照)。これより長い大蛇行は1986-1988年(約1年8か月）までさかのぼります。

予測と実際(短期予測)

今回は11月14日号の、11月11日から予測した11月21日までの結果を検証します。図4上段は、11月11日から予測した11月21日の黒潮の状態です(1日平均)。図4下段は、観測値を取り入れて実際に近いと考えられる11月21日の状態です。

予測は概ね悪くありませんでしたが、大蛇行の形や、四国・足摺岬の離岸のタイミングなどに違いがありました。

1. ^[1]2017/7/12号「黒潮流路はどれくらい先まで予測できるのか」でも解説しているように、１ヶ月はある程度の精度をもって予測できる限界に近い長さです。毎月の検証では、限界に挑戦するため１ヶ月先の予測の検証をしています。仮に検証で１ヶ月先の予測が当たっていない部分があっても、たとえば１週間先の予測が外れ続けたという意味ではないことにご注意ください。↩
2. ^[2]黒潮大蛇行時の室戸岬沖の黒潮の様子については「黒潮大蛇行時の四国沖の状況」で解説しています。↩