2019年の5大ニュース

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黒潮親潮ウォッチでは2019年も様々なトピックを扱ってきました。黒潮親潮ウォッチの過去の記事一覧はこちら(リンク)で見ることができます。2019の話題を5大ニュースとして振り返ります。

1) 黒潮大蛇行が続く

2017年8月に始まった黒潮大蛇行は、2018年に引き続き、2019年も1年を通して黒潮大蛇行でした。始まってから約2年5か月になっています。今年の5月には1986-88年の黒潮大蛇行期間(1年8か月)を超え、「黒潮大蛇行が過去3番目長さに」なっています。

黒潮親潮ウォッチは、今年も黒潮大蛇行に関する多くの記事を書いており、「黒潮大蛇行記事のまとめ」で見ることができます。

2020年が始まっても、まだ黒潮大蛇行は続くと予測しています(黒潮予測記事)。このまま続けば、1981-1984年の2年7か月の記録を超え、過去2番目の長さとなりそうです。

2) 親潮が暖水渦の影響を受ける

親潮の記事は親潮ウォッチとして書いてきました。

今年が始まった当初は親潮が強い状態でしたが(親潮が強い (親潮ウォッチ2019/2))、次第に黒潮からの暖水渦の影響が大きくなりました(黒潮の影響がさらに大きくなるか (親潮ウォッチ2019/6))。

とは言っても親潮が完全に暖水渦で阻まれたわけではなく(暖水渦の隙間を通る親潮の水 (親潮ウォッチ2019/9))、暖水渦の影響が読みにくい年でした。

3) 日本周辺の水温が高め

日本周辺の水温の状態を、月1回の「最近の水温の状況」記事で1年間見てきました。

黒潮大蛇行や親潮の影響のため、状況は場所や時期によってまちまちですが、全体的には高い水温が目立ちました。特に大きな被害をもたらした台風15号や19号などが高い海水温上を通過しており、その勢力の維持に寄与したと考えられます。

このような高い海水温が日本や世界の天候にどのような影響を与えているかを研究するhotspot2研究プロジェクトが今年度から始まっています

水温の状況と予測については、姉妹サイトの「季節ウォッチ」もご覧ください。

4) バイオロギングの活用

アプリケーションラボでは、動物の体に計測機器を付けてその行動を追う「バイオロギング」手法による計測を、海洋や大気の観測として活用する研究を進めています。

今年の6月には、アプリケーションラボの宮澤泰正所長代理が「海の情報を動物たちに聞く」という解説を書いています。今年度公開した北西太平洋の海況再現データJCOPE2M再解析には、ウミガメに取り付けられたセンサーから2009年~2016年に得られた水温を取り入れています。今後も得られたデータを取り入れていきます。

ウミガメで得られたデータを取り入れることで、数ヶ月先の世界の天候を予測する季節予測も向上することもわかりました(プレスリリース: ウミガメ由来の海洋観測データを季節予測シミュレーションに活用 —バイオロギング手法により海洋・気象観測網の発展に可能性—)。

5) 海洋酸性化研究の進展

アプリケーションラボの石津美穂特任研究員、宮澤泰正ラボ所長代理らは、笹川平和財団海洋政策研究所、水産研究・教育機構国際水産資源研究所の協力のもと、これまで把握することが難しかった日本沿岸域での海洋酸性化の状況を、環境省がデータを収集し公開している公共用水域の現場pHデータを使ってはじめて明らかにしました(プレスリリース: オープンデータから明らかになった、日本沿岸域での海洋酸性化)。(海洋酸性化については「進む海洋酸性化」参照)。

日本周辺を含む北西太平洋での海洋酸性化の予測にも取り組んでおり、笹川平和財団海洋政策研究所の「海洋危機ウォッチ」のサイトで試験的に公開しています。海洋酸性化の予測については、Blue Earth「海の”天気”予報」を社会に活かすの記事「JCOPEに生物の活動を組み込んで、海洋酸性化を予測する」もご覧ください。