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30 Nov. 2015: Mirai

我々が今回スマトラ沖「50km」にやってきたのには幾つか理由があります。その 一つが、(以前の記事にも書きましたが)ベンクルの陸上観測部隊が揚げる「ビデ オゾンデ」と、「みらい」偏波レーダーとの、同期観測です。

皆さん「レーダーアメダス」などでお馴染みかと思いますが、それに使われてい るのと似た気象用(降雨用)レーダーが「みらい」には装備されています。実はこ のレーダーを装備している船は世界でも数少ないのですが、その「みらい」のレー ダーが2014年から新しいレーダーになりました。その時に加えられた機能が「偏 波観測機能」。

以前の「みらい」レーダーでは、水平偏波、すなわち水平面に振動する電波のみ で観測していました。偏波観測機能のあるレーダー、「偏波レーダー」では、垂 直偏波も同時に測れるようになりました。これによって、レーダーに映る降水粒 子(雨、雪、霰(あられ)、雹(ひょう)、……)の形や大きさが判るようになり、こ の原理を使って雨量の測定精度が上がります。

ただ、「みらい」の偏波レーダーは、世界で初めての「船に載せた」偏波レーダー。 揺れる船から測った情報がどのくらい正しいのかは、まだ理論やシミュレーショ ンでしか示されていません。

そこで「ビデオゾンデ」の出番です。実際に空中にある雨や雪の映像を撮影する 機材を風船で飛ばすこの機材は、日本で長年の実績のある観測機材です。これを 専門とする山口大などの観測チームとタッグを組んで、陸上からビデオゾンデを 飛ばし、その同じ場所を「みらい」のレーダーで観測することによって、ビデオ ゾンデが撮影する「実際にそこにある」降水粒子とレーダー観測データとを比べ ることで、レーダーデータがどのくらい正しいのか、違っているとしたらどう補 正すれば良いのか、を探る、というのが、今回の観測の目的の一つです。

また単なる精度検証だけではなく、降水雲の研究そのものとしても、両者の組み 合わせには期待ができます。ビデオゾンデは、限られた場所のみですが、現実に その場所にどんな降水粒子があるかが解ります。一方、レーダーは、データの精 度はしっかり検証する必要がありますが、降水雲の空間構造が解ります。お互い の長所を活かし、弱点を補って解析を進め、この地域の降水雲がどんな特徴・役 割を持っているのか、を調べていきたいと思います。

……にしても、この観測は盛り上がります。淡々と進む定点観測の中でのイベン ト的な要素(雨雲がちょうど真上にかかった時しか実行できない)があるからか、 離れた場所にいるチーム同士が一緒に同じターゲットを狙う連帯感からか、はた また今この瞬間に湧いている雲の奥をのぞきこむ探究心・好奇心からか。数時間 後か、明日か、数日後かわかりませんが、次の機会が(本心から)楽しみです。

By MK


30 Nov. 2015: Bengkulu

コンビ

観測は限られた人材をやりくりして、ローテーションを組んで作業をします。今 回はJAMSTECからの研究者だけでなく、山口大学と九州大学の先生がビデオゾン デ観測を行うために来た他、普段は船上で観測支援を行うグローバルオーシャン ディベロップメント(GODI)の観測技術員も陸上観測に参加しています。さらに、 インドネシアの2つの機関(BPPTとBMKG)のスタッフもローテーションに組み込 まれています。今日、見学した時にはそのBPPTとBMKGのペアが順番にあたってい ました。会話は当然インドネシア語で行われていたので詳細はわかりませんが (そのうちの一人とはコンピューターの同時通訳を使って筆談しました)、今回 初めて参加するスタッフに片方が教えながら作業をしていました。

一方、ラジオゾンデ観測を行っているその横で、BMKGスタッフによる彼らの定常 観測であるパイロットバルーン観測も見学することができました。このバルーン には何のセンサーも付いていません。風に流されていく様子を地上から観測して 風向・風速を求めます。このため、上昇速度が1分間で500フィートになるように 充填するガスの量が決められています。放球後、一人は装置越しにバルーンを見 つけ、仰角と方位角を1分間毎に計測し、その結果を隣にいる女性が記録して行 きます。

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By KY