※このコラムは、2024年3月25日に掲載した研究者コラムの続編です。
昨春に発生した太平洋熱帯域のスーパー・エルニーニョ現象は、昨年末に最盛期を迎え、それから徐々に衰退しています。現在は、ほぼ終息し、弱いながらもラニーニャ現象発生の兆候が見え始めました。一方、熱帯インド洋は、全体的に水温が高い状態にあります。これは正のインド洋海盆モード現象(注1)の特徴といえます。これに加え、西インド洋の水温が非常に高い状態でもあり、こちらは正のインド洋ダイポールモード現象の特徴といえます。
気象庁やいくつかの現業予報機関は、典型的なラニーニャ現象が今夏から発達する可能性を報告していますが、アプリケーションラボの予測システムは、ラニーニャ現象というよりは弱いラニーニャモドキ現象が夏に出現し、冬まで持続すると予測しています(図1)。また、インド洋の熱帯域には、昨年と同様に正のダイポールモード現象が発生すると予測しています。3月1日時点での予測では、負のダイポールモード現象の発生が示されていたので、大きく予測が変わったことになります。
典型的なダイポールモード現象は秋に最盛期を迎えますが、今回のダイボールモード現象は夏に最盛期を迎える予測となっており、珍しい事例になるかもしれません。また、正のダイポールモード現象はエルニーニョ現象と同時発生することが多く、ラニーニャ現象と同時発生することも大変珍しいです。2007年にも同様の状況になりましたが、その夏は、日本は記録的な猛暑になりました。今は当時より地球温暖化が進行している状況です。今後のダイポールモード現象とラニーニャ現象の様相から目が離せません。
ラニーニャモドキ現象とインド洋ダイポールモード現象の説明は、3月25日の研究者コラムをご参照ください。
注1:インド洋熱帯域で全体的に水温が上がる現象で、エルニーニョ現象後に起きやすい。水温が下がる場合は負のイベントと呼ばれる。