2016年8月号:今年の秋は?

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写真:横浜研究所から見た、房総半島の積乱雲

写真は横浜研究所から見た、房総半島の積乱雲です。夏の晴れた日によく発生し、雲頂が高度10kmまで達することがあります。8月に入り横浜研究所でも暑い日が続きましたが、これから秋の季節、世界の気温や降水量が気になりますね。SINTEX-Fの季節予測によると、9-11月は世界の多くの地域で気温が平年より高くなりそうです。また、熱帯の太平洋では弱いラニーニャ現象またはラニーニャもどき現象が、インド洋では負のインド洋ダイポール現象が持続し、これらの現象が地域の降水に影響を与えそうです。

今年の9-11月の気温と降水量は?

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図1 2016年9月から11月までの地上気温の平年差(ºC)。 予測開始日は8月1日。

今年の9-11月に予測される世界の気温です。SINTEX-Fの予測によると、世界の多くの地域で9-11月の気温は平年より高くなりそうです(図1)。一方で、ブラジル北部では、気温は平年より低くなりそうです。

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図2 2016年9月から11月までの降水量の平年差(mm/日)。予測開始日は8月1日。

次に、今年の9-11月に予測される世界の降水量です。SINTEX-Fの予測によると、アメリカや韓国、中国東部、インドシナ半島、東アフリカ、オーストラリア南西部では雨が平年より少ない見込みです(図2)。一方で、インドネシアやオーストラリア北東部、南米の北西部では、雨が平年より多くなりそうです。

また、日本の9-11月は、気温が平年より高い予測となっています。特に、9-10月は九州地方の一部を除いて雨が平年より多い見込みです。ただし、中高緯度の予測精度には限界がありますので、今後の予測情報に注意してください。

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図3 2016年9月から11月までの海面水温の平年差(ºC)。 予測開始日は8月1日。

日々の天気と異なり、季節を決める気候の変動には海面水温が大きく関わっています(参照:季節予測とは?)。特に、熱帯域は他の海域に比べて海面水温が高く、わずかな水温の変動が世界の気候に影響をもたらすことが知られています。

SINTEX-Fの予測によると、9-11月の熱帯太平洋は弱いラニーニャ現象またはラニーニャもどき現象の状態が続く見込みです(図3)。7月の水深200mくらいまでの水温を見てみると、赤道全体で水温が平年より低くなっていますが(参照:NCEP/CPC)、SINTEX-Fモデルでは強いラニーニャ現象またはラニーニャもどき現象の発生を、現時点では予測していません。これは、7月31日までに観測された海面水温を用いて予測を行う手法(参照:季節予測とは?)によって生じているかもしれません。しかしながら、SINTEX-Fモデルと同様の予測結果が他の気候予測システムでも確認できますので(参照:IRI ENSO Forecast)、今後の予測情報に注意してください。

一方、インド洋ですが、7月の海面水温を見ると、東部で水温が平年よりも高く、西部で低くなっています(参照:NOAA/PSD)。これは、「負のインド洋ダイポール現象」として知られるもので、9-11月にかけて負のインド洋ダイポール現象が持続する見込みです。そのため、東アフリカでは雨が平年より少なく、スマトラ・ジャワ島では雨が平年より多くなりそうです。また、オーストラリア西岸をみると、9-11月の海面水温は平年よりも低くなる見込みです。これは、沿岸ニーニョ・ニーニャ現象の一つである「ニンガルーニーニャ現象」として知られるもので、オーストラリア南西部では雨が平年より少なくなりそうです。

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図4 2016年8月以降に予測される、ニーニョ3.4指数とエルニーニョもどき指数、インド洋ダイポール指数(ºC)。 予測開始日は8月1日。青が観測値、グレーが9つの異なる初期条件で計算した予測値、赤が9つのグレーの予測値の平均値。

最後に、世界の気候に影響を与える熱帯域の気候変動現象が今後どのように発達するか、見てみましょう。図4は、熱帯域の現象が最もよく現れる海域で計算された海面水温の平年差になります(図4)。ニーニョ 3.4指数、エルニーニョもどき指数はどちらも、赤の予測値の平均をみると、8月から年末にかけてゼロ度をわずかに下回っており、弱いラニーニャ現象またはラニーニャもどき現象のような状態が続くことを予測しています。

一方、インド洋ダイポール指数は、8月から11月までマイナス0.5度を越えて、負のインド洋ダイポール現象が持続することを予測しています。その後、年末にかけて負のインド洋ダイポール現象は減衰する見込みです。

日本を含む世界の気候には、太平洋に発生するエルニーニョ現象やラニーニャ現象だけでなく、インド洋に発生するインド洋ダイポール現象も大きく影響を及ぼすことが分かっています。今年の9-11月は、インド洋では負のインド洋ダイポール現象が持続し、太平洋では弱いラニーニャ現象またはラニーニャもどき現象の状態が続きそうです。海洋起源の気候変動現象がこれからどのように発達し、世界の気候にどのような影響を与えるか、今後注意して見ていきましょう。