6月末から7月初めにかけて、黒潮大蛇行の先から渦がちぎれました。これまで、「黒潮親潮ウォッチ」6月17日発表の黒潮「短期」予測から、大蛇行から渦の一部がちぎれる可能性を示してきました。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)の地球観測研究センター(EORC)とJAMSTECアプリケーションラボが共同で運営している海中天気予報のサイトで、気象衛星ひまわりが観測した海面水温と、海中天気予報JCOPE-T DAの海面水温をリアルタイムで比較することができます。
6月26日(図1)には、青色の矢印で示すとおり、大蛇行の先が細長く伸びている様子がわかります。3日後の6月29日(図2)には、渦が切り離された状態になっています。
図2だけではわかりにくいので、JCOPE-T DAについて海面高度にしてみると(図3)、海面高度の低い部分(冷水渦)がちぎれている様子がはっきりわかります。
過去の大蛇行でも同じような渦の切り離しが起きており、1975年から5年間ほど続いた大蛇行においても2回起きています。今回の渦の切離は、1977年の春から夏にかけて起きた渦の切離と似ています(図4)。
このときは渦の切離の後、さらに2年以上大蛇行が続きました。今回も、「黒潮親潮ウォッチ」長期予測でお知らせしているように、渦の切離によって一時的に大蛇行は弱まりますが、上流からやってきた小蛇行と合体することで大蛇行は勢力を保つと予測しています。
過去の研究(Kawabe 1995)によれば、大蛇行からの渦の切離は、上流のトカラ海峡で一時的に流速増加が生じることがきっかけになると指摘されています。潮位計のリアルタイム計測結果をみると、今回もやはり上流のトカラ海峡で流速が増加しているようです。こうした流速増加が、実はさらに上流域のニホンウナギの産卵場を含む日本の南の海流全体にも起きていて、今回の渦の切離だけでなく、今年の予想外のウナギ卵稚仔魚の豊漁にも関係しているかもしれな
黒潮大蛇行のなりゆきや、そのほかの海流にまつわる様々な話題について、今後も、「黒潮親潮ウォッチ」での話題提供にぜひご注目ください。