今年は暖水渦が継続 (親潮ウォッチ2020/12)

まとめ

    • 北海道南に暖水渦が昨年から継続して存在しています。
    • 暖水渦のために、沿岸寄りの親潮の南下①(親潮第一分枝[1])がしにくい状況です。これはまだ続きそうです。ただし、渦の合間をぬって細く南下する冷水(点線)はありそうです。
    • 沖側の親潮の南下②(親潮第二分枝[1])は平年並みですが、今後は暖水渦を回りこみ平年より強くなりそうです。
Fig1

図1: 親潮状態の説明図。

 

見通し(長期予測)

海洋予測モデルJCOPE2Mで、約2か月先までの予測を行っています。図2はJCOPE2Mによる水深100メートル[2]での12月2日の水温(色、℃)と流れ(矢印)です。赤色が黒潮の影響を受けた暖かい水温で、青色が親潮の影響を受けた冷たい水温です。親潮の影響を受けている範囲の指標として、水温5°Cに太い黒線を引いています

北海道南に暖水渦(A)が継続して存在しています。そのため親潮が南下しやすい状況ではなく、沿岸付近では水温5°C線(黒太線)は平年の位置(青線)より北にあります。暖水渦は昨年から存在し(2019年の親潮をアニメーションで振り返る (親潮ウォッチ2020/2)参照)、今年はずっと暖水渦の影響が続きました。

Bは日本海から太平洋側に出てきた津軽暖流によるものです。

図3は図2に対応する2020年12月2日から来年2月10日までの予測をアニメーションにしたものです。暖水渦Aの影響はまだ続くと予測しています。暖水渦の東ではを渦回りこみ、冷水の南下が平年より強くなりそうです。渦Bは次第に弱まります。

Fig2

図2: JCOPE2Mによる2020年12月2日の水深100メートルでの水温(色、℃)と流れ(矢印)。赤色が5°Cより高い黒潮の影響を受けた暖かい水温で、青色が5°Cより低い親潮の影響を受けた冷たい水温。親潮の影響を受けている範囲の指標として水温5°Cに太い黒線を引いた。細い青線は1993-2018年平均の水温5°C線で平年の親潮の影響範囲。

 


図3: 図2に対応する2020年12月2日から2021年2月10日までの予測のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。

詳細(短期予測)

より高い水平分解能のモデルJCOPE-T DAで短期予測(約10日先)も行っています。毎日更新されるJCOPE-T DAの予測は、JAXAが提供を開始した可視化サイトで見ることができます。図の見方は「JAXAと共同で新しい海洋予測を開始」で解説しています。

図4は「1. 人工衛星「ひまわり」観測とJCOPE-T DAを比較するサイト」で親潮付近を見たものです。時間は2020年12月6日15時台(日本時間)の1時間平均で、左が気象衛星「ひまわり8号」による海面水温の観測、右がJCOPE-T-DAによる海面水温の推定値です。

人工衛星では雲で観測できないところまで、モデルでは水温を推定しています。図2よりも分解能が高いこのモデルでは渦の合間をぬって細く南下する冷水(点線)がある様子が見えています。

Fig4

図4: 「人工衛星「ひまわり」観測とJCOPE-T DAの比較するサイト」で親潮付近を拡大した図。時刻は2020年2月6日15時台(日本時間)の1時間平均。左が気象衛星「ひまわり8号」による海面水温の観測。灰色でデータが無い場所は雲などで観測できなかった所。右がJCOPE-T-DAによる海面水温の推定値。

 

図5は2020年12月8日午前9時から12月18日午前9時までの予測のアニメーションです。左が海面、右が水深100mです。右の水深100mの図には、親潮の勢力の範囲の指標として、水温5℃線を黒太線線にしています。JCOPE-T DAは潮の満ち引きも計算しているので、1時間ごとの図でアニメーションにしています。

最新の予測は上記JAXAの可視化サイトでご確認ください。


図4: 2020年12月8日午前9時から12月18日午前9時までの1時間ごとの予測のアニメーション。左が海面、右が水深100m。矢印(ベクトル)が海面の流れの向きと強さ(メートル毎秒)。色が海面水温(℃)。温度の等温線も2℃ごとに白色で加えてある。水深100mの右の図には親潮の勢力の指標として水温5℃の等温線も黒太線で加えている。クリックして操作してください。全画面表示にしたり、途中で停止したりできます。

 


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黒潮親潮ウォッチでは、親潮の現状について月に一回程度お知らせします。親潮に関する解説一覧はこちらです。 JCOPE-T-DAによる短期予測はJAXAのサイトで見ることができます。 4日毎に更新されるJCOPE2Mによる親潮の長期解析・予測図はJCOPE のweb pageで見られます。親潮関係の図の見方は2017年1月18日号2017年2月1日号で解説しています。

  1. [1]親潮第一分枝・第二分枝については親潮はどんな流路になっているの?で解説しています
  2. [2]天気の影響を受けやすい海面よりも海流の状態を反映していると考えられます。