まとめ
見通し(長期予測)
海洋予測モデルJCOPE2Mで、約2か月先までの予測を行っています。図2はJCOPE2Mによる水深100メートル[2]での1月29日の水温(色、℃)と流れ(矢印)です。赤色が黒潮の影響を受けた暖かい水温で、青色が親潮の影響を受けた冷たい水温です。親潮の影響を受けている範囲の指標として、水温5°Cに太い黒線を引いています
北海道から東北沖のに暖水渦Aが存在しており、水温5°C線(黒太線)は暖水渦Aのために平年の位置(青線)より北にあり、暖水渦の影響で沿岸寄りの親潮の南下①が弱いことを意味しています。昨年12月の予測では、暖水渦Aは弱まると予測していましたが、予測のようには弱まりませんでした。一方、暖水渦Aの東では、水温5°C線(黒太線)は平年の位置(青線)に近く、沖側の親潮の南下②は平年並みです。
図3は図2に対応する2020年1月29日から4月8日までの予測をアニメーションにしたものです。暖水渦Aは弱まるとは予測しているものの、その影響は残り、沿岸寄りの親潮の南下は弱いと予測しています。沖側の親潮の南下は平年より強まりそうです。
日本海を見ると、水温5度線(黒線)が平年(青線)よりも北にあり、日本海が平年よりも水温が高くなっていることを示しています。予測でも通常より高い水温が続きます(図3)。
図3: 図2に対応する2020年1月29日から4月8日までの予測のアニメーション。クリックして操作してください。途中で停止もできます。
詳細(短期予測)
より高い水平分解能のモデルJCOPE-T DAで短期予測(約10日先)も行っています。毎日更新されるJCOPE-T DAの予測は、JAXAが提供を開始した可視化サイトで見ることができます。図の見方は「JAXAと共同で新しい海洋予測を開始」で解説しています。
図4は「1. 人工衛星「ひまわり」観測とJCOPE-T DAを比較するサイト」で親潮付近を見たものです。時間は2020年2月2日16時台(日本時間)の1時間平均で、左が気象衛星「ひまわり8号」による海面水温の観測、右がJCOPE-T-DAによる海面の推定値です。
この時期人工衛星では雲に隠れている場所が多いですが、モデルはそれを補っています。暖水渦Aによって親潮の南下が抑えられていますが、まわりを通って冷水が南下している様子が見られます。
図5は2020年2月3日午前9時から2月13日午前9時までの予測のアニメーションです。左が海面、右が水深100mです。右の水深100mの図には、親潮の勢力の範囲の指標として、水温5℃線を黒太線線にしています。JCOPE-T DAは潮の満ち引きも計算しているので、1時間ごとの図でアニメーションにしています。
最新の予測は上記JAXAの可視化サイトでご確認ください。
図5: 2020年2月3日午前9時から2月13日午前9時までの1時間ごとの予測のアニメーション。左が海面、右が水深100m。矢印(ベクトル)が海面の流れの向きと強さ(メートル毎秒)。色が海面水温(℃)。温度の等温線も2℃ごとに白色で加えてある。水深100mの右の図には親潮の勢力の指標として水温5℃の等温線も黒太線で加えている。クリックして操作してください。全画面表示にしたり、途中で停止したりできます。
2019年の親潮をアニメーションで振り返る
2019年の親潮の状況を振り返るために、図6に図3に対応する昨年2019年の1月1日からのアニメーションを作成しました(図3の状況までつなげるために今年の1月29日まで)。2019年が始まった当初は親潮が強い状態でしたが(親潮が強い (親潮ウォッチ2019/2))、次第に黒潮からの暖水渦の影響が大きくなりました(黒潮の影響がさらに大きくなるか (親潮ウォッチ2019/6))。
図7に図5に対応する昨年2019年の1月1日からのアニメーションも作成しました(図5の状況につなげるために今年の2月2n日まで)。ただし1時間ごとではなく、1日平均にしています。
図6: 図3に対応する2019年1月1日から2020年1月29日までのJCOPE2Mによる推定値のアニメーション。
図7: 2019年1月1日から2020年2月2日までの1日平均のJCOPE-T DAによるアニメーション。左が海面、右が水深100m。矢印(ベクトル)が海面の流れの向きと強さ(メートル毎秒)。色が海面水温(℃)。温度の等温線も2℃ごとに白色で加えてある。水深100mの右の図には親潮の勢力の指標として水温5℃の等温線も黒太線で加えている。
黒潮親潮ウォッチでは、親潮の現状について月に一回程度お知らせします。親潮に関する解説一覧はこちらです。 JCOPE-T-DAによる短期予測はJAXAのサイトで見ることができます。 4日毎に更新されるJCOPE2Mによる親潮の長期解析・予測図はJCOPE のweb pageで見られます。親潮関係の図の見方は2017年1月18日号と2017年2月1日号で解説しています。
- [1]親潮第一分枝・第二分枝については親潮はどんな流路になっているの?で解説しています↩
- [2]天気の影響を受けやすい海面よりも海流の状態を反映していると考えられます。↩