「海洋速報」黒潮流軸とモデル予測の比較(2020年12月30日)

ポイント1. 黒潮流路「短期予測」は黒潮蛇行の成長をやや過大に予測していましたが、蛇行の移動はうまく予測できていました。

ポイント2. 黒潮「長期予測」は黒潮蛇行の位置を西寄りに予測していましたが、最近の予測は「海洋速報」流軸に近づいてきました。来月に予測されている黒潮大蛇行はだんだん安定して表現されるようになってきました。

短期予測

今回は12月25日までの黒潮「短期」予測 (2020年12月16日発表) で紹介している予測(JCOPE-T DAモデルを紹介)について示します。まずその日の現況を図1に示します。

Fig1

図1. 「海洋速報」黒潮流軸(黒線)とJCOPE-T DA黒潮流軸(緑線)。2020年12月16日。

 

現況予測の結果は(緑線)は海洋速報の結果(黒線)の蛇行をやや過大に表現していることがわかります。説明にある図1を見ればわかるとおり、黒潮蛇行の先端部が別の渦のようになって膨らんでいました。その後の短期予測(図2)では黒潮蛇行が徐々に南東方向に移動する様子を、蛇行の振幅はやや過大ながら予測できていました。

 

Fig2

図2. 「海洋速報」黒潮流軸(黒線)とJCOPE-T DA黒潮流軸(緑線)。左: 2020年12月20日。右: 2020年12月27日。

長期予測

次に、長期予測(JCOPE2Mモデルの結果を紹介)

2021年1月29日までの黒潮「長期」予測(2020年11月25日発表)

2021年2月2日までの黒潮「長期」予測(2020年12月2日発表)

2021年2月10日までの黒潮「長期」予測(2020年12月9日発表)

2021年2月18日までの黒潮「長期」予測(2020年12月16日発表)

におおよそ対応する結果を並べて示してみます(図3)。

Fig3

図3. 「海洋速報」黒潮流軸(黒線)とJCOPE2M黒潮流軸(色線)。左: 2020年12月20日。右: 2020年12月27日。

 

それぞれの予測結果が全体として黒潮蛇行の位置を西寄りに予測しすぎていましたが、最近の予測(2020年12月10日開始)は12月27日の蛇行の西側部分(図3右)をうまく表現できるようになってきました。

それではさらに最近更新している予測結果と「海洋速報」流軸の比較はどうなっているのか図4に示します。

Fig4

図4. 「海洋速報」黒潮流軸(黒線)とJCOPE2M黒潮流軸(色線)。2020年12月27日。

 

ようやく現況を表現できるようになってきました。さらに1月の予測状況を図5に示します。

 

Fig5

図5. 「海洋速報」黒潮流軸(黒線)とJCOPE2M黒潮流軸(色線)。左:2021年1月10日。右:2021年1月24日。

 

最近の予測になるほど、1月の大蛇行が安定して存在するように表現されています。「長期」予測の説明をご覧いただければわかるように、大蛇行からいったん切り離された渦が西に移動して九州南東沖で再び黒潮に合体すると予測しています。大蛇行が安定するかどうかについては、この合体が下流にどのような影響を与えるかにかかっていると考えています。こうした渦の合体はカオス現象と言ってよく、予測の科学としてどのように取り扱っていくべきなのか興味のあるところです。こうした不確実な状況をより精度よく予測できるように、来年はさらにモデルの改良を進めていきます。